映画『テイク・ディス・ワルツ』 (主演 ミシェル・ウィリアムズ)
【物足りないのがフツー】
男と女が出会って、恋をして結婚をする。はじめの何年かは一緒に居るだけで楽しいし、なにか諍いがあったとしてもお互いを理解しようと努める。その努力すらも前向きに捉えられるだろう。
だが時間とともに、そうした気持ちは萎んでいく。いわゆる倦怠期である。多くの場合は、それが訪れる前に子供が出来て、あの育児という大騒動に突入するので、それを感じずに済む。
だが、その騒動がない場合は、このマーゴのように夫婦間の倦怠を意識することになる。それを打ち払おうと彼女は夫のルーにスキンシップを求めるが、ルーは自分の仕事に夢中で相手にしてもらえない。
結婚記念日の外食ですら、すでに会話に話題を欠く二人である。──分かる。ルーに限らず、二人でいることが当たり前になると、いざ改まって話す話題などないのである。早々に引き上げて、家のリビングで気兼ねなく寛ぎたいと思ったことは私も多々ある。かくしてマーゴの満たされない思いは募っていく。
ルーの姉が、「私たちは、なにか物足りなくて当たり前」と言うのが印象的だ。
ともあれ、マーゴにはかねて気になっている男がいる。取材旅行で知り合ったダニエル。なんと彼は自宅の斜め前の住人だった。最初のうちこそ、抑制的に接していたマーゴだが、次第に気持ちが抑えられなくなる。
ダニエルが突然引越してしまったのを機にマーゴはルーと別れ、ダニエルのもとに行く。その後のマーゴは一見、満ち足りたように思える。
だが、映画の前半であったシャワー室での女性同士の会話を思い出す。
「新しいものって魅力的よね」
「でもその新しいものも、やがて古いものになる…」
映画は、以前ダニエルと乗った遊園地の乗り物に、マーゴがひとりで乗っているシーンで終わる。
ちなみに、タイトルの『Take This Waltz』は、このワルツ──1・2・3、1・2・3と同じリズムで同じ場所をくるくると回る──を手にしろ、ってことだから「繰り返される人間の欲望と日常を受け入れろ」と言っているのだとか…。なるほどね。
画像引用元 Hulu ぴあ映画


