映画『特捜部Q 吊された少女』(主演 ウルリッヒ・トムセン)
【東洋の神秘は何でもアリ】
この「特捜部Q」シリーズは私のお気に入りの一つだ。前作から暫く間があり、いつ新作が出るのかと待ち遠しかったので、ネットで配信されたと知ったときは、思わず「キターーーッ!」と叫んでしまった。
本シリーズの魅力は言うまでもない。北欧ミステリー特有の陰鬱とした冷たい空気感と主人公カール・マークの武骨さにある。本作でもそれらは垣間見えるものの、これまでとは違った印象を受けた。
一つにはカール役の俳優が、見るからに武骨そうなニコライ・リー・コスから疲れた中年のようなウルリッヒ・トムセンに代わっているのが大きい。調べてみると、カール役だけではなく、他の登場人物の演者や制作スタッフも前作『知り過ぎたマルコ』から刷新されたのだと言う。
そうだっけ? 前作ではあまり違和を感じた記憶はない。その違いは何だろう。思うに本作は脚本がずさんなのだ。その核心は、捜査対象が東洋思想を取り入れたカルト教団という設定にある。太陽崇拝(原作では天照大御神まで出てくるらしい)や場違いな空手の修行、瞑想の真似事は、取ってつけたかのような違和感が満載である。欧米であれば、そのような安直さが許されても、我々日本人には通用しない。
そうした脚本における「東洋の神秘」への過度な依存が何でもアリにして、本作のリアリティ、ひいてはシリーズの魅力を損なっているように思える。
その極めつけは終盤、カールの同僚ローセが監禁された密室内で火をつけたシーンである。脱出を図ろうとしたのか、あるいはカールらに自分の居場所を知らせようとしたのか(結果としてカールらに救出されるのだが……)。普通に考えれば自らを窒息・焼身させる自殺行為でしかないはずだ。あまりに非論理的な行動に白けてしまった。
それと、タイトルにもなっている吊るされた少女は、映像で見る限り吊るされたと言うより木の枝に載せられたと言うべきだが、重機も使わずにいったいどうすればあんな状態にできるのだろう。それも東洋の神秘で済ませるわけ?
画像引用元 Amazon PrimeVideo

