映画『ザ・バッド・シェパード~生存の代償~』(主演 クリストス・カラボギアス)
【避けられない人間の性】
ちょっと想像してみて欲しい。貴方は今、友人たちと一緒にクルマで山の中の一本道を走っている。もう何時間も対向車を見かけないし、追い抜いたクルマもない。それもあって、ハンドルを握る友人Aは猛スピードを出していた。
…と、そのとき前方に歩く人影が見えた。
「危ない!」
と貴方は叫んだが遅かった。ゴツンという鈍い音とともに、それは大きく弾んでゆっくりと地面に落ちた。
貴方たちは慌ててクルマを停め、跳ねてしまった女性に駆け寄ったが、既にこと切れている。近くに転がっていたバッグの中身を貴方が確認すると、なんと数億円はあろうかという現金である。
一方、友人Bは彼女の腰に拳銃が刺さっているのを見て、こう言った。
「これはきっとヤバいカネに違いない。俺たちが奪っても誰も訴えないはずだ」
「馬鹿を言うな! 警察に連絡しよう」と、良き市民である貴方は言うだろう。だがスマホを取り出そうとしたその手をAが制するのだ。
「警察はまずい。俺は酒を呑んでいる」
そう言えば、Aはウイスキーの小瓶を片手に運転していた。
Bが貴方に畳みかける。
「お前だって、このカネがあれば傾いた会社を再建できるだろ!」
そうなのだ。貴方はこのところ会社の経営が思わしくなく、カネに困窮している。
貴方たちが彼女の遺体をクルマに載せたちょうどそのとき、パトカーがやってきた。下りてきた警官は、トランクを開けろ、と言う。貴方が躊躇していると、あろうことかBはくだんの拳銃で警官を撃ち殺してしまった。
もう後には引けない。貴方は帰りが遅くなることを妻に伝えようとして、スマホを無くしたことに気付く。仕方なく、Aにスマホを借りて妻に電話をすると、
「あら、○○」
と、Aからの電話と勘違いした妻はAの下の名前を口にした。普段、貴方の前ではAのことは苗字でしか呼ばないのに……。
そうこうしているうちに見知らぬ男がやって来る。
「カネを返してくれ。それは俺のカネだ」と男は静かに言う。
Bが拳銃をその男に向けて彼の身体を調べるが、丸腰で武器は持っていないようだ。椅子に拘束しても男は何故か自信に満ち溢れていて、
「君たちはそのカネを俺に返すだけでいい。事を荒立てるつもりはない。君たちがどう足掻いてもいずれ俺のもとに返ってくるんだ。だから悪いことは言わない。今返してくれ」と意味深なことを言う。
加えて男は、貴方たち一人ひとりの現在ばかりか過去に至るまですべてを把握しているようだ。
さて、貴方ならこの後どうする?
参考までに映画ではラストで、
「十分な理由を与えれば、犬のように人間は殺し合う。俺は飢えた犬の群れに肉を投げ、殺し合うのを見物する。犬に狩りをさせて俺のために働かせる」
と男が呟くように言う。映画のタイトルを直訳すると「悪い羊飼い」である。
画像引用元 Youtube Prime video


