書籍『無人暗殺機ドローンの誕生』(リチャード・ウィッテル)
【戦争の形を変えた瞬間】
ロシアのウクライナへの侵攻は、既に4年を超えている。当初、3日で首都キーウは陥落し、ロシアに併合されると言われたが(ロシアもそのつもりだったようだが)、意外とウクライナが健闘して前線は膠着している、とこれまで伝えられていた。
しかしこの春以降、ウクライナがロシアに大攻勢をかけているようだ。その主役はドローンだと言う。
ドローンはレーダーに捕捉されにくいのでロシア国内に深く侵入し、軍事施設や製油所などのインフラ施設をピンポイントで攻撃して、それが功を奏しているらしい。もちろん今後の戦況について予断は許さないわけだがドローンが近年、戦争の形を変えたというのは本当のようだ。
ドローンの定義は諸説あるようで難しいが、ここでは兵器としての「無人機」に限定すると、その歴史は古く、本書によればその萌芽は1970年代にまで遡る。その後、幾多の技術革新を経ながら発達するも、長らく戦争の現場ではオモチャ程度の扱いで、本格的に使用されることはなかったようである。
それが一気に兵器として重要視されるようになったのは、やはり2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件が契機だったと思える。同事件の首謀者であるアルカイダの幹部(とりわけオサマ・ビンラディン)への報復に当たり、アフガニスタン山岳地帯の隠れ家を転々とする彼らを気付かれずに探し出し、攻撃することができるドローンが一躍脚光を浴びた形だ。
それでも本書によると、最初にドローンに攻撃ミサイルを搭載し、それを実際に敵に向けて発射させる段になると、いかにアメリカと言えども指揮系統は大いに混乱したようだ。
わかる気がする。その瞬間に戦争の形が変わることを、その指揮系統に関わった誰もが予感したからだ。それはSF映画の世界が現実になるということだ。現場に居合わせない──遠く離れた本国のエアコンの効いた司令室に居る──人間がボタン一つで敵を殺せるようになる瞬間である。
混乱の最中、誰が下したか分からないまま発射命令が伝えられ、それは見事標的に命中した。9.11からおよそ1か月後のことである。
それから20数年を経る中で、ドローンは大きく進化したようだ。国力とりわけ軍事力でロシアに相当劣るウクライナがドローンを駆使することで劣勢を挽回している。ウクライナに限らず、イランもホルムズ海峡を牛耳るうえでドローンを効果的に活用していると聞く。
これからの戦争は、これまでのように空母や戦車の数では決まらないのかもしれない。願わくば戦争を抑止する形でドローンが効けば良いと思う。

