News 2024.04.27
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書籍「東京・都市再生の真実」(北崎朋希)~その2/2~

書籍「東京・都市再生の真実」(北崎朋希)~その2/2~

【反対ならおカネのことを考えよう】

その1/2からの続き)

かといって、前述の憲法89条から行政がその費用を用立てるわけにもいかない。そうした中、更新時期が差し迫り思い至ったのが、都市再生特区の活用だったのだろう。

明治神宮側は、公共的施設等を新たに整備することで空中権を得て超高層ビルを建てる。そこから上がる収益で建て替えやその後の維持管理等にかかる費用を賄うわけだ。国や東京都は戦後のいきさつを考えれば知らぬ顔もし辛いが財政の苦しい中、税金を投入する必要もなくなる(憲法89条がある中で仮に投入するとなれば新たな屁理屈が必要になるが、それも要らなくなる)。

つまり、カネの面だけを考えれば特区の活用は、将来にわたり運営の見通しが付く明治神宮よし、税投入の(屁理屈を考える)必要がなくなる行政よし、これに伴う税負担のない一般ピーポーよしの「三方よし」の構図が成り立つ。

たしかに、情緒面──僕の思い出を壊すな──をどうするか、という問題が残されてはいる。しかし、どうしても「僕の思い出を壊すな。現状のまま残せ」と主張するのであれば、カネの問題の解決策とセットであるべきなのである。

「そんなことは知りません。とにかく嫌なものは嫌なんです」と言うのは大人の議論ではあるまい。老朽化した神宮球場を使い続けることは危険なのだ。

マンモス行政である東京都や、当該再開発に関わる大企業等のやることに対し、「反対だ、反対だ」と物申すのは、やっすいヒロイズムが満たされるかもしれない。しかし、それだけでは何も解決されないではないか。

浅田次郎は「神宮外苑で金儲けをするな」と言ったそうだが、これまで縷々述べてきたように、これは極めておカネの問題なのだ。経済活動無くしてどうやってそれを解決しようと言うのか? 具体策を提示して欲しい。
 
あるいは、桑田佳祐は再開発反対の曲を作り、「未来の都市が空を塞いで良いの?」と唄ったそうだが、ここはひとつその曲の収益を明治神宮にプレゼントしたらどうなのか? そうしたら、超高層ビルの何層分かは低くできるかもしれない。
 
同じことは、村上春樹にも言える。彼ら著名人が率先してたとえば明治神宮の運営を担保する寄付型のクラウドファンディングでも立ち上げ、自らも大口の寄付をすれば、再開発などしなくて済むかもしれないではないか。少なくとも、計画の縮小には寄与するだろう。
 
当初(書籍「明治神宮」の稿)から言うように私は本件再開発の推進派ではないし、宗教法人・明治神宮を擁護する立場にもない。むしろ普段は桑田佳祐の楽曲や村上春樹の小説が大好きなのだ。それだけに、有意義な議論のなされていないのがとても残念なのである。
 
(以上で、この稿終わり)
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