News 2024.05.04
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書籍「明治神宮」(今泉宣子)~その1~

書籍「明治神宮」(今泉宣子)~その1~

【神宮外苑の樹木伐採に反対しない者は人に非ず?】

このところ、神宮外苑の再開発──とりわけ樹木伐採──への批判が喧しい。亡くなった坂本龍一も反対していたというし、浅田次郎や村上春樹もしかり。先頃はサザン・オールスターズの桑田佳祐もその意を歌詞にした新曲を発表したという。今やこれに反対しない者は人に非ずという勢いである。

私も若い頃、あのイチョウ並木をそぞろ歩いたり、沿道のカフェから眺めたりしたので、できればあのまま残して欲しいとは思う。村上春樹や桑田佳祐らの言ってることも、私のそれとさして変わらない。要は、「僕の思い出を壊すな」と言っているのだ。

しかし、それはむしろ今の時代を生きる人間のエゴではないのか──。こんなことを言うと、お前は都市開発を生業としてきたからだろう、と言われるかもしれない。そして、それは多分に当たっているのかもしれない。が、ここは一旦、以下を読んでくださる方と一緒に考えたい。

私は今から30年ちかく前、東京近郊のとある場所で約20ヘクタールの住宅地開発に携わっていた。その着工前に、周辺住民に対して説明会を開いたときのことだ。我々が一通りの説明を終えて質疑応答の議事に進むと、マイクを手にした五〇前後の女性が声高に叫んだ。

「私たち家族は、ここの自然が気に入って、20年ほど前にわざわざ都心から引っ越してきました。子どもたちはこの自然に触れて育ちました。思い出がいっぱいある場所です。そこを開発するなんて許せません! 絶対反対です‼」

会場は割れんばかりの拍手。続いて同様な反対意見が相次いだ。これに対し我々の説明者は必死になって、開発後も極力緑化するだの、開発することで安全性や利便性が増すだのと言って理解を求めたが、火に油を注いだだけだった。

(以下、その2に続く)

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