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書籍「イニシエーション・ラブ」(乾くるみ)

書籍「イニシエーション・ラブ」(乾くるみ)
【あの時代の恋愛はミステリアスだったのだ】
 
何の予備知識もなく読んだことも手伝って、ただでさえ愚鈍な私は読了しても暫く「???」という状態でした。作者が、主人公の下の名前を間違えてる? んなわけないか、どういうことだと思い、ネットで謎解きページを読んでやっと、なるほどォ、そういうことか、と理解したのでした。
 
そう言えば、序盤からなにかと違和感がありました。例えば本の奥付には2007年に第1刷とあるのに何故、それより十数年前のバブル期の物語なのか? あるいは、舞台あえて静岡にするのは何故か(あまり必然性を感じないが)。さらには、主人公が付きあう彼女――繭子はうぶな筈だが時おり妙に男慣れしたふるまいをするのは……。
 
中盤以降では、東京に行ってからの主人公・鈴木の豹変ぶりが気になりました。唐突に表れた粗暴で自己中心的な性格に「サイテーだな。こんな奴だったのか」と。
 
終盤になると、鈴木の繭子との思い出すら違っていて、おいおい作者、大丈夫か、と思ったのですが、なるほど、これは極上のミステリーだったのですね。
 
いや、スリラーかもしれない。何が恐いかって、繭子が一番怖い。だってさぁ……、やめておこう。日本中の女子から叱られそうだ。
 
ちなみに未読の人のために、予備知識としてポイントを二つ。ひとつは、バブル期――つまりスマホはおろか、ケータイもない時代――の恋愛物語であること。固定電話時代の恋愛はそれだけでミステリアスでした。もうひとつは舞台を静岡としたのは大きな意味があること。特に静岡県人なら「静岡あるある」でピンと来る人もいるでしょう。この二つを抑えて読めば、初めて読んでも私のように「???」とならないかもしれません。
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