映画『宝島』(主演 妻夫木聡 広瀬すず他)
【第1幕で壁に銃を掛けるなら…】
沖縄には米軍基地が集中している。そのことによって受ける精神的・肉体的苦痛は、沖縄の人にしか分からない。したがって、本作のような映画を観たからと言って、それについて遠く離れた我々が軽々に口にするのは憚られる。
だが、本作のクライマックスで登場人物のグスクとレイが交わしたやり取りは、昨今の世界情勢に鑑みて掘り下げても良いかもしれない。
そのやり取りは、沖縄の言葉で激しくこう交わされる。
「殺されたら殺し返すのか?」
「きれいごと言っても何も変わらなかったさ。こっちも武器を持てばいいわけよ。武器を持ったら奴らも耳を貸すよ」
「……きれいごとに力がないことくらい分かってる。分かってるばあよ! でも、俺は諦めんよ。人間はそんな馬鹿じゃないさ」
平和を守るためには、抑止力が必要だとの声が国内外で高まっている。日本は長らく防衛関連費をGDPの1%程度に抑えてきたが、アメリカ現政権の要請もあってここにきて2%に迫っており、さらには5%の声も聞こえてくる。
そこでは、「自らを守る気のない国など、同盟国であっても助けてくれない」との議論が幅を利かせている。
日本だけではない。北大西洋条約機構(NATO)に加盟するヨーロッパの国々も、「平和を維持するには戦争に備えることだ」(NATO元事務総長 談)と同様の動きを見せている。
こうした情勢を受け、我が国はついに武器の輸出も解禁されることになった。さらには、唯一の被爆国にもかかわらず、核武装の必要性まで議論の俎上に上がるようになってきている。
いつの間にこんなことになってしまったのだろうか──。
ロシアの劇作家チェーホフは言った。
「物語の第1幕で壁に銃を掛けるなら、第3幕でその銃は必ず発砲されなければならない」と。
もちろん、現実世界は物語とは違うし、グスクが絞り出すように言った「人間はそんなに馬鹿じゃない」を私も信じたい。
しかし銃にしろナイフにしろ、物語でそれを使ってしまうのは、いつだって気の小さな弱い人間だ。現実世界の各国リーダーには居ないとどうして言えようか。いや、もうすでに居たのか……? だとしたら、連鎖しないことを祈るのみだ。
ところで今は物語の第何幕なのだろう。
画像引用元 シネマトゥデイ

