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映画「ヒマラヤ 運命の山」(監督 ヨゼフ・フィルスマイアー)

映画「ヒマラヤ 運命の山」(監督 ヨゼフ・フィルスマイアー)

【ルールもないし、レフェリーもいない世界】

うーん、観ているだけで息苦しくて、手足は凍傷になってしまいそうだ。何で人は山になんか登るのだろう。そこに山があるから? ぜんぜん思いませんけど……。

そもそも、人間が自然に立ち向かおうなんて無謀過ぎる。だってそこには、ルールもなければレフェリーもいない。命の危険があるときでさえ、「はい、そこまで!」と言って試合を止めてくれるわけではないのだ。

あれは神宮外苑の小洒落たオープン・カフェで、学生にしては奮発したコーヒーを飲んでいたときのことだ。お嬢様育ちの彼女が何を思ったか、少し意地悪そうな顔で僕に問いかけた。

「あなたは自分のこと、強いと思っているでしょ?」

「まあ、めちゃくちゃ強いってほどじゃないけど、フツーの男よりは強いさ」と当時、体育会合気道部で主将をしていた僕はいくらか自慢げに答えた。

「でも、本当に強いのはあなたたちじゃなくて、登山部だとか、ヨット部だとかの自然を相手にしている人たちじゃないかしら」

「…………」

ぐうの音も出なかった。僕も密かにそう思っていたからだ。

だが、自然はそんな人間の強さなど歯牙にもかけず凌駕する。ましてや、この兄弟はろくな装備もなく頂上にアタックしようだなんて――、当然の報いだと思ってしまう。おまけにチーム内で足の引っ張り合いもあって、ああヤだ、ヤだ。完全にリタイアして時間が出来ても、絶対に登山なんかしないんだから。

画像引用元 Amazon

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