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書籍「東京・都市再生の真実」(北崎朋希)~その1/2~

書籍「東京・都市再生の真実」(北崎朋希)~その1/2~

【要するにおカネの問題である】

最近はもう悪化の一途が常態化して話題にすらならなくなっているが、国と地方を合わせた債務は22年度末で1200兆円を超えている。なんとGDP比220%は、世界でも類例を見ない数値だ。

今後も社会保障費の増大が進むことを踏まえると、公共施設等の社会資本は新たに整備することはおろか、今あるものの維持管理すらおぼつかなくなる(中央高速笹子トンネルの崩落事故や浜松市佐久間の落橋事故等はその兆候である)。

そうした中で、民間活力にその一端を担わせようとしたのが、都市再生特別措置法の目的一つであろう。この特措法の目玉である都市再生特区は、一般の方々に極めてシンプルに説明すると、行政に代わって公共施設等を整備する者に、その効果に応じて空中権を与える(具体的には法定の容積率を緩和する)というものである。見方を変えれば民間事業者は、公共施設等を整備するコストで空中権を買っていると言えなくもない(こんな説明では乱暴すぎるとお怒りの諸兄も多いだろうが)。

さて、これを念頭にしつこいようだがもう一度、神宮外苑の再開発を考えたい。書籍「日本史の謎は地形で解ける」について書いた際に、民有地である神宮外苑の緑を現況のまま保全しようとするのなら、行政が税金を投入して当該地を公有地とするしかないだろうと指摘した。しかし、実際には明治神宮に譲渡された経緯やそれに伴う神宮の運営問題があって、そうもいかないようだとも述べた。

というのは、もともと国有地だった明治神宮の内苑・外苑は、戦後の「国家神道」の解体に伴い、宗教法人・明治神宮に無償譲渡されたものである。

いくら敗戦国の事情とはいえ(また無償とはいえ)、いきなりあれだけ広大な土地の維持管理や施設の運営を押し付けられた明治神宮側──それまでは国家の手厚い保護下にあった──もたまったものではなかったのだろう。そこで、外苑に設ける野球場等の集客施設の収益でそれらを賄うことを、譲渡受入れの条件としたようだ。

したがって、内苑と外苑がセットで初めて運営が成り立つ神宮側とすれば、外苑のみを行政に買い戻させるわけには行かないのである(内苑は宗教施設そのものだから政教分離の原則から行政が介入できないし、公金の宗教法人への支出を禁じた憲法89条により外苑すら不可の指摘もあろう)。

「だったら、やっぱり再開発などせずに、これまで通りで良いじゃないか!」と思われるかもしれない。ところが、そうもいかないのである。外苑の野球場やその他建物・工作物の更新時期を迎えているからだ。先述の仕組み──外苑の収益で内苑・外苑を運営する──では、建物や工作物の建て替え費用等までを捻出できなかったのに違いない。

(以下、その2/2に続く)

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