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小説「理由」(宮部みゆき 作)

【最後に小糸少年が投げかけた現代社会への問いかけ】

序章で「殺されたのは誰で、誰が殺人者であったのか」とあるので、我々読者はつい犯人探しの推理小説的に読み進めてしまいます。しかし、それは作者の確信犯的なミスリードでしょう。読み進めるうちに読者は、これが1つの事件に関わったいくつかの家族の物語であることに気付かされます。

そう、作者の書きたかったのは、現代社会における家族のありようです。物が氾濫し、個人主義が蔓延する今の世の中において、親とは何なのか、子とは何なのか、夫婦とは、兄弟とは……。そして、それらをつなぎ止めるはずの紐帯は今もなお存在するのか──。

作者が物語の最後数行で少年・小糸孝広に言わしめた「僕もおばさんたちを殺したのだろうか」という問いかけに、我々は今答えられるでしょうか。作者は、「思いのほか近い未来のどこかで、ごく普通の人々が、ごく普通に答えることのできる時期が来る」と予想しました。

1998年に刊行された小説ですが、私はまだその時期に来ていないと思います。少なくとも私には、その答えを見出すことができません。

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