映画「スノーピアサー」(主演 クリス・エヴァンス)
【過剰な温暖化対策と彼女の機嫌】
いやあ、暖かい。一年のうちで一番寒いはずのこの時期にあって、本稿執筆時点(2/12)の浜松は15℃越え。暖冬である。
翻って、この映画を観たときは寒かったように記憶している。
「温暖化のせいじゃない? 北極が暖まると逆に北半球は寒くなるらしいわよ」
「暑くても温暖化、寒くても温暖化って、結論ありきでどっか嘘くさいな。てかさあ、エアコンの温度もっと上げようよ、この部屋寒いよ」
「だーめ、電気代かかるから!」
彼女は、設定温度を上げようとした僕の手からリモコンを取りあげた。実家が金持ちのわりに吝嗇家なのだ。
「……そ、それはそうと、地球はこの映画みたいに寒冷化してしまうより温暖化した方がずっと良いね」
「なんでよ、北極の氷が溶けてホッキョクグマとか死んじゃうのよ」
「寒冷化したら、食料を生産する耕作地が減っちゃうじゃん。これからも地球の人口は増え続けるというのにさ。温暖化すれば逆に耕作地は増えるから、ホッキョクグマには気の毒だけど、ここは人間様のために我慢してもらうしかないな」
「知らないの? 温暖化が人類に与える影響だって大きいのよ。モルディブ島なんかは沈んじゃうんだから。今すぐにでもCO2の排出を止めなければいけないのよ」
当時まだ温暖化懐疑論者だった僕は言わなければいい反論をした。
「百歩譲って地球が温暖化しているとしてもだよ、それが人為的なものだという決定的な証拠などないんだぜ。そもそもCO2が原因だなんて、キリスト教の原罪主義と終末思想によるもの……」
「あーもう、うるさいわね。とにかく地球は温暖化していて、その原因はCO2ということになってるの!」
たしかに、なにが真実かは重要ではなくて、なにが真実だということになったのかが重要だと、かのマックス・ヴェーバーは言ったのだった。だが、だからといって、この映画にあったような過剰な温暖化対策によって寒冷化……、なんてことにならないようにして欲しいものである。
「今日はもう帰ったら? あなたなんか、寒冷化して凍死しちゃえばいいのよ」
いったん臍を曲げた彼女の機嫌を直すのは、地球の温暖化を止めるのと同じくらい大変なのだった。さむっ。
画像引用元 バゴプラ