映画『Cloud クラウド』(主演 菅田将暉)
【雲は複雑系の極致】
Cloudの概念は、その言葉本来の意味「雲」のように掴みどころがなく曖昧で、私はよく理解できていない。
ネットの検索エンジンによれば、クラウドとは「インターネット経由でサーバーやストレージ、アプリケーションなどのコンピューター資源やサービスを、必要な時に必要な分だけ利用する仕組みやそのサービス全般をいう」のだそうだ。
「よくわからんな……」
「簡単じゃないの! 自分で使うアプリや作ったデータを全部自前で抱え込んでおく必要がないってことよ」
「それが雲とどういう関係があるんだ?」
「雲? 雲はどうでもいいのよ」
「……???」
この実態の掴めないIT用語の性質は、皮肉なことにこの映画の不穏な空気感と見事にリンクする。主人公の吉井はネット上で転売業を営むが、商品を右から左へと動かすだけで商品自体に何の責任も持たない。またそれを利用する客もどこの誰か分からない者たちである。
さて、出演者は主役の菅田将暉の他、最近よく見る古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝らと続き、チョイ役で松重豊まで出ているから、これはもう豪華キャストと言って良いだろう。
なんの前情報もなく観たので、途中までこれはいったいどういう種類の映画なのか、ジャンルで言ったらホラー? サスペンス? それともシリアスな社会派映画? 何になるのだろう──。そう思わせるほど、独特の空気感というか、世界観が秀逸で、豪華出演陣と相まってこの先どうなるのかと期待が高まった。
しかし後半に入ると、吉井の転売業がネット上で不興を買い、それら有象無象が夏の雲のようにもくもくと増殖する。そしてその一部が、実際に吉井に天誅を下さんと集まって銃を撃ち合う展開になる。そこに何の必然性もなく一見、荒唐無稽に思える。
だが、監督や製作者の意図するところはまさにその不条理さにあるのだろう。つまりこれは、クラウドというふわふわとした掴みどころない世界に生きる現代人への警鐘ということに違いない。
終盤の登場人物のやりとりがそれを象徴する。
「お互い知らない者同士がゲーム感覚で集まったりするから隙だらけなんだよ」
「人に意見を言うならちゃんと顔を見せろ!」
雲というのは複雑系の極致にあって、その動きは最新のスーパーコンピューターを使ってもなお予測不能だと言うのを聞いたことがある。たしかに今でも天気予報アプリは30分後の天気すら当てにならないことが多い。
雲はどうでもいい、というわけじゃなさそうだ。
画像引用元 映画.com

