映画『リアリティ』(主演 シドニー・スウィーニー)
【その警察手帳はホンモノ?】
ある日、リアリティ・ウィナーはスーパーで買い物をした後、自宅に戻りクルマから降りようとすると、二人の男から声を掛けられる。男たちはFBIだと言って身分証とバッチを見せる。決して高圧的ではない。どこかフレンドリーでさえある。
何でも機密文書漏洩の疑いがあり、今から家宅捜査をすると言う。もちろん令状もあると言うが、なかなか見せない。
私はここまで観て、ははん、これはきっと新手の詐欺を描いた映画なのだなと思った。
たとえば貴方は、自分は警察だと名乗る男から、いきなり
「ほら、この通り。警察手帳だ」
と見せられて、それがホンモノかどうかなんて判断できるだろうか?
しかもどこかの市長のようにチラ見せで、おまけに何度も捜査令状はあると言うが、いつまで経っても出さないのだ。
だが、そのうちに続々と黒塗りの大型車両が自宅前に停まり出し、そこから溢れるように出てきた、FBIとロゴの入った上着やTシャツを着た男たちによって、あっという間に自宅周りに規制線が張られる。
しかも突然ナレーションが入り、このときの状況は録音されていた、と言ってその音声がやおら流れ出す。そこで、「ああ、これは過去にあった事件のドキュメンタリー映画なのか」と思い直す。
だがこの辺りでは未だ──主人公の小柄な女性ウイナーを何人もの大柄なFBI捜査官が取り囲むシーンを見て──たぶん冤罪事件なのだろうと思った。相変わらず、捜査令状は見せないし…。
しかし一方で何故、この女性は
「いったい何の容疑なんですか? 具体的に言ってください! 身に覚えがないんですけど…」
と抗議しないのだろう、とも感じていた。
その後、家宅捜査が進む中で別室で尋問が始まり、捜査令状も示される。(それでも私はこんなものがホンモノだって、どうしたら分かるのだ?と思っていた)。
だが、尋問の半ばで彼女はふいに自供を始める。それは決して強要されたものでも誘導されたものでもない。それまでのFBI捜査官の捉えどころのない、やんわりとした態度はそのためだったのだろう。
とどのつまり、彼女にかけられた嫌疑は本当だった。彼女は勤務先NSA(アメリカ国家安全保障局)で得た国家機密を中東の某国に意図的に流していたのだった。
愚鈍な私はここまで来てやっとわかった。これは実際にあった事件の再現映画だったのだ。なるほど、リアリティねえ。
画像引用元 Real Sound

