書籍「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディみかこ 著)
2021
5
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書籍「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディみかこ 著)
英国の社会問題を、彼の地に住むアイルランド人と日本人との間に生まれた少年の目を通して見ます。欧米の社会問題なら評論家や大学の先生あたりが新書などで書いていそうですが、彼らにはここまでリアルに書けないでしょう。ここにあるのは、まさに今そこにある危機だからです。少年の目の前にある危機は評論家ではいられないません。
翻って日本ではどうでしょう。今後、生産年齢人口が激減するこの国では、経済成長のために近い将来どういう形であれ、移民(その定義は曖昧ですが)の受け入れが避けられません。多様なバックグラウンドを持つ人々がこの国で共存すれば、新たなイノベーションが生まれるなど良いこともたくさんあるでしょうが、当然様々な軋轢も生じるでしょう。なかには社会に影響を与える問題も発生するに違いありません。いや、ここに示された問題のいくつかは既にこの国でも起きていることです(が、幸いにして未だ本格化していません)。
要するにこれは日本の近未来の絵姿なのです。閉鎖的な社会を好むこの国では、より顕著で解決困難な社会問題になることでしょう。