テレビドラマ『HOMELAND』(主演 クレア・デインズ)

【仕事熱心とコンプラ違反】
FBIやCIAを扱ったアメリカのテレビドラマはハズレがない。シリーズ化されて何年も続いているものも多いが分かる気がする。本作も実にシーズン8にまで及ぶが、視ていてまったく飽きない。
これを視て思ったのは、仕事に深くコミットした人間は清濁併せ呑む覚悟が求められる──具体的に言えば自ずとコンプラ違反に直面する──ということだ。
主人公キャリー・マディソンは国の安全を司るという非常に強い使命感から、ときに違法の諜報活動を行う。もちろん、そうしなければならない立場に追い込まれての、やむにやまれぬ苦肉の策である。
私にも覚えがある。もう何十年も前のことなので既に時効だとは思うが、それでもここで詳述するのは憚れる。ただ、一つ言えることは平常時であれば、法令や倫理に反することなどしない。しかし何か問題が起こったとき、その仕事に責任をもって深く関わっていると、いつの間にか待ったなしでコンプラ違反をする/しないの判断を迫られることがある。
そんなときは大抵上司に相談する時間などない。たとえあったとしても、ほとんどの場合、相談などできない。そんなことを相談されても、上司が困るだけだとわかるからだ。
とはいえ、このままでは会社や多くの人に迷惑がかかる。しかもそれを防ぐためのコンプラ違反がバレる可能性は極めて低い。もし万が一バレたら自分一人が責任を取れば良いでははないか──、そのようにして苦渋の決断をするのである。
その結果、事が明るみに出たりすると「なんて馬鹿なことをしたのだ。もっと大きな問題になることくらい分からなかったのか!」と安直に責める人がいる。だが、そういう人は仕事に深くコミットしたことがないのだなと思う。あるいは、たまたま運良くそうしたシチュエーションに立たされた経験がないだけだ。
つまりこれは、一生懸命に仕事をすればするほど避けて通れないという構造的な問題なのだ。その対応策としてホウレンソウの強化など効いた風なことを言う御仁もいるが、現場の手足を縛るだけでまったく的外れである。
そうした風潮はアメリカでも同じようで、このキャリーも都度、一人で責任を取らされる。私がこのドラマに深く共感する所以である。頑張れ!キャリー‼
画像引用元 フロントロウ