News 2025.07.14
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小説「世界でいちばん透きとおった物語」(杉井光)

小説「世界でいちばん透きとおった物語」(杉井光)

【透きとおっているのは…】

この小説は当館の常連ご利用者の方から紹介いただいたものだ。読み進めながら、私としてはもう少しアクの強い小説が好みなんだけどな、わりと綺麗な小説を好む人だからな、などと思っていた。

しかし、読み終えて分かった。彼女が薦めたのは小説の中身ではなかったようだ。なるほど、こういうことか。小説としてこういう形態も成立するのか、と感心する。

本作で初めて知ったが、あの京極夏彦は読者の読み易さを追求した結果、作中の一文がページの捲りを跨ぐことが絶対にないようにしているのだという。そればかりか、同じ作品でも文庫版化に際しては、単純に文庫本のページ組みに流し込むことをせずに(単純に流し込むと当然、一文がページを跨がないとする決め事が崩れてしまうので、それを守るために)全ページ、全行を整形し直すのだそうだ。

京極作品は当館の蔵書にもたくさんあるので、あらためてそれらを見直すと、たしかにそうなっている──、知らなかった。

本作はそれをさらに発展させて……、これ以上はネタバレになってしまうので書けない。今更、そんなことを言うなよ。お前はここでしょちゅう色んな作品のネタをばらしているだろうよ、と叱られそうだが、この小説に限っては“ネタ命”みたいなところがあるからご容赦願いたい。

それにしても……、と思うのはちょうど今、この秋の出版・刊行に向けて書籍「じゃじゃの私設図書館オススメBOOKS&MOVIES2」の編集・校正作業を進めているのだが、それこそ読者が読み易いように、ここで改行した方が良いだろうかとか、ここは体言止めとした方が臨場感が出るだろうかとか、ここは「……」ではなく、「──」とすべきだろうとか、あれこれ悩んでいる。だが、本作を読むとそんなことはどうでも良いのかもしれないと思えてきた。

また、その刊行予定の書籍の本文用紙(特に厚さ)も近いうちに決めなければいけないのだが、これも大いに悩むところだ。それは裏のページの文字がどれだけ透けるかに直結するからだ。

おっと、いけない。これ以上はネタバレになってしまう。え、何を言っているのか、全然分からないって? ですよねぇ~。読めばわかります。

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