News 2025.07.08
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書籍「調理以前の料理の常識」(渡邊美香子)

書籍「調理以前の料理の常識」(渡邊美香子)

【常識は変わる】

私が結婚生活を送っていた頃は、今と違って夫婦で家事を分担するというのは一般的ではなく、我が家でも専業主婦だった妻が家事全般をやってくれていた。そのため妻を亡くした後、いきなりそのすべてをやらなくてはいけなくなったのだが、料理については独身時代ずっと自炊をしていたので何ら抵抗はなかった。

だが、如何せんレパートリーが片手で数えるほどしかない。それらも見よう見まねでほとんど自己流だ。子供らを育てるのにそれではまずいと思い、あるときこの本で基礎から勉強しようと思ったのである。

今でもこの本で憶えているのは、「きのこ類は洗ってはいけない」。──こういう楽ができることはいつまでも憶えている。もっとも、これを書くに当たりあらためて読み直すと、「洗ってはいけない」とは書いていなかった。「洗うと味や風味が落ちるので洗わないのが基本」とだけある。楽できることは断定調に変えてまで記憶に残すようだ。

逆に言えば、それ以外はほとんど憶えていなかった。もちろん今もためになることはいっぱい書いてあると思うが、一方で「料理の常識」は時代とともに変わってきているから、その後私の中でその常識も更新されたのだろうと思う。

たとえば、「ゆで卵は水からゆでる。冷たい卵を湯に入れるとひび割れするから」とあるが(そして、私もずっとそうしていたのだが)、そうすると殻をつるんと綺麗に剥けない。ところどころ薄皮と一緒に白身を持っていかれてボコボコになってしまうのだ。

ゆで卵の殻を上手く剥くゆで方については諸説あるようで、今ではネット上でそれらを見ることができる。私はそれらを一つひとつ試しながら、さらに私独自の改良を加え、とうとうベストなゆで方を見つけた。

ここでは詳述を避けるが水からゆでるか、沸騰した湯に入れるかに限って言えば、湯に入れるのが正解である。ただし、湯に入れる前に卵をスプーンの裏などで軽くたたいておく必要がある。あえて殻にひびを入れておくことで、あとで剥き易くするのである。

とまあ、こんなふうに常識は時代とともに変わるようなのだ。それは料理や調理に限ったことではあるまい。家事も男が分担してやらなければならなくなったのは、その証左である。

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