短編集「恋のトビラ」(石田衣良 角田光代 ほか)
【恋のトビラが開くとき】
TBSアナウンサーの安住紳一郎が以前、日曜朝のラジオ番組で、10年代ごとのモテる男のタイプ(あるいは条件と言うべきか)を分析していて、これがなかなか面白かった。
まず、10歳以下は身近な人。お父さんとか、幼稚園や学校の先生とか……。10代になると足の速い子。運動神経の良い男子ということだろうか。
20代は見た目、顔の良い男。まあ当然である。そして30代になると、見た目だけじゃダメで性格も、ということになる。見た目じゃなくて性格──ではなく、見た目+性格というわけだ。なんと贅沢な……。
40代では洒落た情報を持っていること。好いレストランを知っている等だ。50代は好い時間の過ごし方を知っている。山歩きとかで自然を愛でるとか? 60代になると良い病院、良い医者を知っていること。70代は内臓、特に胃腸の強い人。80代は脚。立てれば勝ち、なのだそうだ。
聞いていて、さもありなん、と思った。というのは、私のモテ期のピークは10代前半だったのだ。たしかにあの頃私は足が速くて、運動会では毎年クラス対抗リレーのヒーローだった。だからか、多少はモテた。
しかし顔は悪いし、性格も決して良いとは言えないから、20~30代は鳴かず飛ばずで、まったくモテなかった。40代以降も、好いレストラン等は仕事でかなり利用したはずだが、覚える気がないから(そもそも興味がないのだ)、女のコと仲良くなったときに、そうだ、あそこに行こうと思っても連れて行けない。おまけに出不精だから自然を愛でることもできない。ましてや良い医者など、病院嫌いなので知りようもない。
こうして改めて自分の人生を振り返ると、もう少し女のコにモテたかったなとは思うが、安住アナの分析を聴くと、まあこれじゃ仕方ないかと納得せざるを得ないのである。
この短編集を読んでいて思ったのは、女子の「恋のトビラ」とはトキメキなのだろう。女のコがトキメク瞬間に恋のトビラは開くのだ。
「私、あなたといてもトキメカナイの」
と言われたことなら、ありますけど何か?