映画「To Leslie トゥ・レスリー」(主演 アンドレア・ライズボロー)
【悪銭身に付かず】
本日午後に当選発表のある年末ジャンボ宝くじを買った人も多いと思うが、この映画は宝くじの1等を当てた人間のその後を描いたものである。
主人公レスリーは19万ドルという大金を得たのを良いことに、この世の春を謳歌せんと怠惰な毎日を過ごして、酒とクスリに賞金を浪費したという。
あげく使い果たした今も、酒浸りの生活をやめられず、成長した息子やかつての友人たちから酒代をくすねることを繰り返す──。
悪銭身に付かずとはよく言ったものである。
昔、妻の友達夫婦が、このレスリーのように宝くじの1等を当てたことがあった。あの頃(1980年代)は未だ1等が3千万円だったから、ちょうどレスリーの当てた19万ドルと同じくらいだっただろうか。それでも、それまで宝くじなど私の兄がゲットした10万円が身近な最高額だったから、その話を妻から聞いたときはそんなことがあるんだと本当に驚いた。
その夫婦の夫は、それまで勤めていたアパレル関係の会社をさっさと辞め、独立して同業の会社を興した。とはいえ、当時の私と同年配(20代半ば)の若輩者である。経営のノウハウもないままに、ほんの短期間で賞金を使い果たしたばかりか、多額の負債を抱え倒産。あげくは生まれたばかりの赤子を抱いて離婚したと聞いた。3千万円など浪費すればあっという間なのだろう。
興味深いのは周りの反応だった。最初は皆一様に羨む。だが、次は転落するのを、また一様に楽しむ。そこまではこの映画と同じだ。私とて、その例外ではなかったかもしれない。
だがこの映画では後半、驚いたことに慈悲深い愛の手を差し伸べる男が出てくる。スウィーニーだ。彼は普通なら近寄ることさえしたくない女の酔っぱらいに、辛抱強く更生の機会を与える。
その結果、レスリーは働いてカネを貯めて、自分の店を開くまでに至る。もちろん、成功が約束されているわけではない。これからも酒に手を伸ばしたくなるようなことはいくらでもあるだろう。
それでも地道にやるに違いない。彼女が手にした開店資金は決して悪銭ではないのだから。
あの別れた夫婦のそれぞれはその後どうなったのだろう。
PS:今年最後の投稿になります。皆さま、どうぞ良いお年を!
画像引用元 MOVIE WALKER PRESS