News 2025.12.02
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書籍「はじめてのまちづくり学」(山崎義人 清野隆 柏崎梢 野田満)

書籍「はじめてのまちづくり学」(山崎義人 清野隆 柏崎梢 野田満)

【学問にしたら「まちづくり」は遠のく】

これまでに「まちづくり」と名の付く本を何十冊読んだだろうか。数えたことはないが、ひょっとしたら一〇〇冊を超えているかもしれない。

それは私が平日の仕事で都市計画分野の技術士という資格を持ち、主に首都圏で長年いろんな街を実際に造ってきたり、東京副都心の某区で「まちづくり相談員」なる肩書を付けられて幾つかの街と関わってきた中で必要に迫られたからだが、しかしそれでも尚、まちづくりとは何か──未だに分からない。その定義すら明確に書かれた本は少ないように思う。

それらの多くは工学的な都市計画の専門書だったり、単なる都市開発の事例本だったりする。あるいは都市経済学や都市社会学の本だったり、単に街なかの商業のあり方が書かれた本だったりして、まちづくりとは何かを正面から捉えた本を読んだことがなかった。あったのかもしれないが、記憶にないということは腑に落ちてないのだ、きっと。

再三言っているように、私が40年にわたり住み慣れた東京を捨て、郷里浜松に戻って私設図書館の運営を始めたのは、ハードな街を造る「街づくり」ではなく、ソフト面で街を創っていく「まちづくり」を実践するためだった。

しかし、開館5年を迎えた今日、相応にご利用者が増え、毎月のイベント等で盛り上がってはいるものの、これで本当にまちづくりになっているのだろうか、何らかの形で街に寄与しているのだろうか、そもそもまちづくりって一体何なんだ? と考え始めている。

そこであらためて勉強しようと思い、読んでみたのが本書である。だが、読めば読むほど「なんだかなあ」、「これがまちづくりなのだろうか」と思ったのが正直なところだ。結局、大学の研究室で「まちづくり」を学問として語ろうとすると、こうなっちゃうのだろうなという印象だ。

私が実践していて痛感しているのは、街のフツーの市民住民との乖離である。だが、本書の内容がまちづくりだとしたら、なおさら大学のセンセーや東京のコンサルがやって来て、一部の地元の人間とつるんで勝手に盛り上がっているだけ──ということにならないだろうか。

ちなみに、本書によるとまちづくりの定義とは「地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め、「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動」だそうだ。あー、まわりくどい!

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