News 2024.09.20
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映画「ロストケア」(主演 長澤まさみ 松山ケンイチ)

映画「ロストケア」(主演 長澤まさみ 松山ケンイチ)

【誰もが誰かにやってもらいたいこと】

素人に整体やマッサージの真似事をしてもらうとビミョーにツボを外されて、かえって気分が悪くなることがある。それと同じような感覚を、この映画を観終えて感じた。

取り上げた題材はよい。超高齢社会のこの国でまさに今、求められている問題提起である。

生産年齢人口が減り続ける中で、増大する社会保障費。介護士、介護施設の絶対的な不足と要介護高齢者を抱える家族の疲弊。硬直的な法制度のもとで医療現場が直面する葛藤等々──、社会として既に破綻しているのではないかと思う。にもかかわらず皆、何事もないようにして問題を直視しない。まさに、そこにスポットを当てた映画である。

物語は、松山ケンイチ演じる優秀な介護士・斯波──彼は親身な介護を通して介護対象者のみならず、その家族の受けも良い──が、実は自分の父親を含めて重度の要介護高齢者42人を殺していたという話である。彼は聖書にある「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」を実践しているのだと言う。

親の介護が辛いのは、昨日より今日、今日より明日はきっと良くなるという希望を持てないからだ。しかもそれがいつ終わるとも知れず、果てしなく続く。もちろん、一番辛いのは介護されている高齢者自身であろう。日々、拷問に等しい。

だから本作で、遺族の一人は斯波によって「救われた」と言ったのだし、彼を起訴した検事・大友(長澤まさみ)も介護を必要とする母親と訳ありの父親を持つ身として葛藤もあったのだ。確かに彼がやったことは現行の法律では犯罪である。しかし、事そこに至れば誰もが誰かにやってもらいたいことなのである。

ひとたび介護の苦痛から解放されると当時の辛さを忘れて、彼を「人殺し」呼ばわりする者もいる。また新しい生活に希望を見出す者もいて、問題はすり替えられたり、放置されたりする。

私が素人マッサージで感じる、ビミョーにツボを外される感覚──を想起したのは、その辺りである。

画像引用元 lost-care.com

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