TVドラマ「不適切にもほどがある!」(脚本 宮藤官九郎 主演 阿部サダヲ)
【私的な会話でもダメですか?】
先頃(と言ってももう1か月以上前になるが)、放送を終えた通称「ふてほど」。昭和のオヤジがタイムマシンで現代にやってきて色んな騒動を巻き起こす。
社会で活躍する女性を見て「男顔負けだね」とぼそりと口にしたり、女性との交際では「部屋に上げてもらった時点でOKみたいなもんだろ」と言い放ったり。
はたまた、「働き方改革? 定時に帰るのは強制か? 働き方ぐらい自分で決めさせろよ!」とか、「頑張れって言われて会社休む部下が同情されて、頑張れって言った上司が責められるって、おかしくないか?」などなど。
これに対し現代側が理屈で諭そうとするが都度、昭和のオヤジは「気持ちワリ!」と吐き捨てる。
このドラマが多くの人(但し中高年に限るようだ)の心を捉えたのは、令和の理屈がいかにも上滑りしているからだろう。ハラスメントとか、コンプライアンスとかと言葉だけが先走り、問題の本質とかけ離れている。そんな風刺に中高年は留飲を下げたのだ。
全10話の中で私がとりわけ興味深く観たのは第3話「カワイイって言っちゃダメですか?」の回である。令和のテレビ放送ではルッキズム批判、ジェンダーレスなどを念頭に、あれもセクハラ、これもコンプラ違反とやることなすことすべてにダメ出しされる。
あげくテレビはすっかりつまらなくなったというのだが、私はテレビがつまらなくなったのは、それだけが理由じゃないと思うし、不特定多数の視聴者を対象とする以上、やむを得ないようにも思う。むしろ、この第3話はテレビの話にとどめず、市井の人々のフツーの日常に踏み込んで欲しかったと思うのだ。
たとえば、私生活でも可愛い女のコに「可愛いね」って言うのはルッキズムだからダメ! 細やかな気遣いのできるコを「女性っぽいね」と褒めるのもジェンダーレスだからダメ!──なのだろうか? たしかに、職場など公の場やネット上ではアウトだろう。だが、そうでない私的な空間での個人的な会話にすら、横から割り込んできてアウトだ、アウトだと騒ぐエセ(というか、にわかというか)コンプラ・アンパイアには心底閉口する。
アンタの言う通りだとしたら、今の世の中どうやって女のコを口説けば良いというのでしょう?
画像引用元 シネマカフェ