雑誌「BRUTUS №1008」
【男も女もいない一行なんて……】
「一行だけで」。この特集に感化されて、当館でも「お気に入りの一行コンテスト──あなたの一行を教えてください」という企画を始めました。(決してパクリではありませんよ。あくまでもオマージュさせて頂いた企画です。)
去年、「ユーザーとスタッフのお気に入りTシャツ展」を開催したときに、ボランティアスタッフの吉田柴犬氏がスターウォーズのヨーダが描かれたTシャツを出展しました。それには「Do, or do not. There is no try(やるか、やらないか、だ。やってみる、などというのはない)」との言葉も添えられていて、それを見て彼と「今度は『お気に入りの名言展』をやったら面白いかもしれない」と話していました。
しかし、名言というとちょっと堅苦しいし、あまり広がりがないから、今ひとつかなあとも思っていたのです。それに対する答えをこのBRUTUS 1008号が示してくれました。
そう、「一行」。一言でもなければ、一文でもない。もちろんセンテンスやワンフレーズなんて言うのはもっと違う。一行。さすがはBRUTUS! と感心した次第です。これなら、小説の一文でも良いし、詩や歌詞の一節でも良い。名言はもちろん、俳句や短歌、映画や漫画のセリフ等、なんでもOKです。
早速、購入してパラパラとページを繰ると、やっぱり面白い。色々な一行があって、感性というのは人それぞれだと改めて感じ入った次第です。ただ、300もの一行があるのに、「男」とか「女」の文字が含まれているのが一つしかない(?)というのは何だか不自然な気がしました。
というのは、私も好きな一行を思いつくままに十ほど上げてみたのですが、半分近くが「男」「女」が含まれているものでした。私が上げたのは例えば、
「負けて絵になる男が憎い」
これは昔、山口洋子という作詞家が作った男性化粧品CMのキャッチコピー。あるいは、
「男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」は、ご存じフィリップ・マーロウ(レイモンド・チャンドラーの小説の主人公)の名セリフ。
BRUTUSが、こうした一行を載せなかったのは昨今のジェンダーレスやフェミニズム問題を意識してのことだと思うのですが、その分なんだか味気ないというか、情緒に欠ける気がしました。
私などは、同じレイモンド・チャンドラーの小説にあった
「女ってぇのはとにかく嘘をつく。まるで嘘をつかないと損するとでも思っているかのようだ」
という一行も大好きです。
「男だって嘘つくでしょ!」
と女性から叱られそうですが、そんな軽口を叩き合っている方が、あれもNG、これもアウトなんて目くじら立てる世の中より、よっぽど平和な世界だと思うんですけどねェ。ピースv。