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書籍「2030年 すべてが「加速」する世界に備えよ」(ピーター・ディアマンディス スティーブン・コトラー)

書籍「2030年 すべてが「加速」する世界に備えよ」(ピーター・ディアマンディス スティーブン・コトラー)

【テクノロジーの融合が導く心躍る未来】

この手の未来予測本は巻末の解説にもあるように悪書というか、いわゆるトンデモ本であることも多い。根拠レスであってもセンセーショナルな、あるいはショッキングな未来を予測すれば人々の耳目を集めやすいからだ。そこにもっともらしい陰謀論を絡めれば、なおさらである。

そうした中で、ビル・ゲイツが1990年代に著した「ビル・ゲイツ 未来を語る」は良書であった。彼はハンディフォン(巨大な携帯電話)がやっと普及し始めたその時代に、財布とパソコンが融合する「ウォレット・コンピューター」なるものの出現──まさに現代のスマホ──をすでに予測していたのである。当時まだ30代だった私はそれを読んで、心躍る未来を想像して興奮したものだった。

本書でもキーワードは融合(コンバージェンス)である。複数の先端技術が融合することで、本書が書かれた2020年からの10年ほどの間に世の中は指数関数的な変化を遂げると言うのである。

たとえば、全自動運転車はもちろん、空飛ぶ車も実用化され、ハイパーループという最大速度1200km/時の超高速鉄道、さらには28000 km/時のロケットサービスの実現によって、ロサンゼルスの自宅からシドニーの会議室まで30分で移動できるようになるという。

あるいは、医療の発達により平均寿命はゆうに100歳を超えるようになるが、老化が克服されるため健康寿命が延び、死ぬまで元気でいられるようになるとも──。

とりわけ私が期待したいのは、高強度の炭素ナノ繊維を太陽光発電に使用することで、サハラ砂漠の10%ほどの大きさのシステムによって大気中の二酸化炭素を産業化以前の水準まで下げることが可能になるという技術である。

私が思うにSDGsだ、ESGだと声高に叫んだところで結局、100年前の生活に人々が戻れない限り、破滅の速度を遅らせる程度のことにしかならない。そこには抜本的な解決策が必要で、今まで人類がしてきたようにテクノロジーの発達でそれを達成するしかないと思うのだ。もちろん、それがまた新たな問題課題を生むことは理解している。しかし、それもまた次のテクノロジーで解決するしかないのだ。

本稿を執筆している24年の時点で、すでに遅延が明らかな分野も多いし、ハイパーループのように技術は確立しても、社会実装するとなると時間がかかるものもあるので、30年までには無理だとしても早晩、これらは実現するに違いない。90年代にゲイツが今を予測したように。

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