書籍「ヤバい経営学」(フリーク・ヴァーミューレン)
【トンデモ本? いいえ、示唆に富む良書です】
「どうだ、面白かっただろう」と言わんばかりのエピローグには正直ドン引きするが、確かに面白かったという点については認めざるを得ない。
読んでいて、ずっと頭の中に流れていたのはB’zの楽曲「Time Flies」の
〽すべては相手と運任せ──
という一節だった。
たとえば本書では、目を引くような高業績を上げている経営者は、高いリスクを向う見ずに取って、たまたま高いリターンを得たに過ぎないと言うのである。もちろん、当該経営者は
「いいや、自分には成功する確信があったのだ。たまたまでは決してない!」
と言うに違いない。しかし、ビジネスには不確定要素が山ほどあって、成功するか否かは予測がつかないのだと言う。経済学者の成田悠輔氏も、とある講演で、
「(成功者はサクセスストーリーを語りがちだが、単に)出会いに恵まれたり、たまたま生まれた時からすごく特殊な能力とか特殊な体を持っていたとか、あるいはただ運が良かった──そんなこんなだけでうまくいってる人が、ほとんどなんじゃないか」
と言っている。私は成功者でも何でもないが、自分の職業人生で調子の良かった頃を振り返ってみると、その通りだと思う。私の場合は特に人との出会いが大きかった。たまたまである。
経営者に限らず成功者は何かと、その理由をもっともらしく説明しようとするが、ほとんがB’zが歌うように相手と運──社内のパワーバランスや競合他社の状況、あるいは事業環境など──に恵まれただけだろう。要は結果論をあたかも合理性があるかのごとく説いているに過ぎないのである。
ただ本書では、それら「たまたま……」を活かすには普段から準備をしておく必要があると指摘する。これもその通りだと思う。
タイトルがトンデモ本のようで損をしているが、何かと示唆に富む良書である。