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書籍「サラリーマン合気道」(箭内道彦)

書籍「サラリーマン合気道」(箭内道彦)

【極意は気を導くこと】

本のタイトルとは裏腹に合気道の本ではない。著者は合気道をしたことはないと「はじめに」で断っている。したがって、合気道そのものの技術論等は一切ないが、著者がこの本で言いたいことは合気道的な発想がサラリーマンとして生きていくうえでは役に立つ、ということのようだ。

一般的に合気道は、「相手の力を利用して遠くへ投げ飛ばす武道」であるとされ、著者もそのように理解している。そして、その要諦は「脱力」にあると言われる。およそ他の武道や格闘技の常識──自己の筋力を最大限に高め活用する──から逸脱している。

この本で言っていることも、通常のビジネスの現場で言われている常識に逆行している。たとえば、「アイデアは書き留めない」「優先順位の低いものに時間をかける」「目を見て話さない」「仕事に私情を紛れ込ませる」「イエスマンになる」等々。

これらが果たして合気道的かと言われると、学生時代に体育会合気道部で精を出した私としては少々疑問ではあるが、発想の転換という意味では共通するところがあるかもしれない。

特に前述した「脱力」は要諦であるばかりか、極意とも言える。これがなかなか難しくてできない。技を掛けようとすればするほど、力が入ってしまうのだ。だがその瞬間、自分の力と相手の力がぶつかり、技は掛からなくなる。

ビジネスでも似たようなところがある。力に任せ相手をねじ伏せて言うことをきかせても長くは続かないし、大きな流れも生み出せない。もちろん、自分より大きな力を持った者には勝てない。力をぶつけ合ってはダメなのである。

合気道では「気を導く」ということが言われる。相手の力を利用するというより、相手の気を導くのだと。私は合気道でもそれを会得できなかったが、ビジネスでもそれが出来なかったように思う。顧みれば、いつもぶつかり合っていた。

本当にできる者は、関係する人間がいつの間にか自らの意志で、その者を手伝いたい、助けたい、是非協力したいと思わせるのだった。まさにあれがサラリーマン合気道なのだと思う。

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