書籍「たった400字で説得できる文章術」(樋口裕一)

【小論文試験を控える人は必読の書】
デベロッパー等が企図する都市開発プロジェクトなどにおいて、どれだけ論理的で説得力のある企画提案やコンサルティングができるか──それが問われる部門だったからです。そのために、いわゆるフェルミ推定問題なども出しましたが、やはり論理的思考力(ひいては頭の良さ)をみるには、小論文を書かせるのが一番でした。
手許にある当時の出題記録を紐解いてみると、例えばある年の試験は、某住宅設備メーカーのトップが新聞に寄稿していた1000字程度の文章を読ませたうえで、「あなたは、家にどのような機能があれば今までよりも『快適』『健康』『安全』な住空間が生まれると考えるか、400字以内で記せ」でした。解答時間は45分。
またある年は、哲学者ジョン・ロールズが著した「正義論」の一部(2000字程度)を読ませ、「ここで展開されている平等・不平等の思索について、あなたはどのように思うか、400字以内に記せ」という設問でした。解答時間60分。
今から思うと新卒の学生には、なかなかハードな試験だったと思います。問題を出している私でさえ、満足な解答はできなかったでしょう。
まず、①提示されている長文に対する読解力が求められます。そのうえで、②自分の意見を整理・明確化し、③決められた字数で文章にする能力が必要です。
①は普段から文章を読むことに慣れ親しんでいないと叶わないだろうし、②もまたベースとなる知識の集積が必要でしょう。ましてや③など日ごろ文章を書き慣れていないと……。しかし、出題者として種明かしをすると、実は③の「400字以内」というのがミソなのです。
というのは、400字(原稿用紙1枚分)で書ける内容は限られています。滔々とした論理展開など望むべくもありません。もちろん題意を理解する最低限の読解力や基礎知識は必要ですが、主張すべきことを一点に絞ったら、あとはこの本にあるようなイロハを踏まえれば、あら不思議。内容的には大した意見や主張ではなくても、妙に説得力のある小論文ができてしまいます。
もとより正解などありませんから、たいそうな意見など求めていないのです。それでも小論文で簡潔に意見を述べることのできる学生は、入社後仕事を遂行する能力も高いように感じていました。
入社試験や大学受験等で小論文のある方は読んで損はないかと。