映画『8mm』(主演 ニコラス・ケイジ)
【朱に交われば赤くなる】
誰でも人には秘密がある。多くの場合、取るに足らない小さな秘密だが(それでも本人にとっては隠しておきたい)、なかには墓場まで持っていくと決めている大きな秘密もあるだろう。
もちろん、私にも大小さまざまある。とはいえ私のような小市民の秘密など知られたところで誰も興味を示さないが、高名な人物の秘密が白日の下に晒される場合は大騒ぎになる(最近巷で話題のエプスタイン文書が典型である)。
本作の主人公トムは、陰でタバコを吸っていることを奥さんに隠している。取るに足らない秘密だ。その彼が亡くなった大富豪の大きな秘密を暴くのだが、暴いたときに関わった人々がどうなったか、という映画である。
探偵の彼はあるとき大富豪の未亡人から不穏な8ミリフィルムを見せられ、そこに映っている事の真偽を調査して欲しいと依頼される。
そのフィルムは彼女の夫が金庫に隠し遺したもので、中身は覆面の男が10代後半と見られる少女を殺す現場──まさにその瞬間の少女の表情まで──を捉えた、いわゆるスナッフフィルムである。
調査を進める中で映っていた少女の母親を探し出し、トムは訊ねる。
「事実が分からないまま娘さんがどこかできっと幸せに暮らしていると想像することと、娘さんに不幸があったと最悪の事実を知らされることとでは、あなたはどちらを選ぶ?」
母親は、もちろん事実を知りたい、と即答する。
さらに調査を進めたトムは、ハリウッドのアダルトショップの店員マックスと懇意になり、性的倒錯者の裏世界へ入っていく。このときマックスはトムに警告する。
「この世界、一度覗くと病みつきになるぜ」と。本作を読み解くキーとなる言葉だ。
だが、トムは聞く耳を持たない。本邦なら、朱に交われば赤くなる、と言うところだ。
その後トムはNYにまで調査の足を伸ばし、くだんの映像が本物だと知る。しかも性的倒錯者だった大富豪からの依頼で撮影されたことが判明する。
未亡人に事の経緯を告げると、亡き夫の狂気の沙汰がよほどショックだったのか、彼女は自殺してしまう。夫の遺した秘密など、知らなければよかったのだ……。
トムはなぜか警察には届け出ず、犯行に関わった者たちを探し出し、自らの手で処刑する。秘密を暴こうと暴力の世界と交わるうちに、トムもいつの間にか赤く染まってしまったようだ。
唯一の救いは、事実を知らされた少女の母親が言った言葉だ。
「最初は貴方を恨みましたが、娘を思ってくれたのは私のほかに貴方一人です」
画像引用元 fpdの映画スクラップ帖

