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映画『ハナレイ・ベイ 』(主演 吉田羊)

映画『ハナレイ・ベイ 』(主演 吉田羊)

【女のコと上手くやる方法】

先日ここで書いた小説「ハナレイ・ベイ」の映画化である。結論から言えば、比較的原作を忠実に描いていると思う。もちろん、原作とは異なる設定やシーンもあって、それらの中にはちょっと違うんじゃないのと首をひねったり、それは要らなかったねと思ったりしたところもあるけれど、概ね上手く映像化していると言えるだろう。

何と言ってもサチを演じた吉田羊が好い。このさばけた主人公に彼女はとても合っている。サバサバしているが、決して‘ずけずけ’ではない。他人の心に土足で踏み入るようなことはしないのだ。さばけた言葉に愛が感じられる。

そのサチが息子の亡霊を追い求める喪失と再生の物語であるが、その辺りについては前述の通り原作に忠実であるから、先日の駄文で勘弁してもらうこととして、今日はサチが劇中で言ったセリフについて考えてみたい。

カウアイで知り合った青年と東京でばったり出くわしたときのことだ。通り沿いのオープンカフェで女のコとお茶していた青年に「あ、おばさん」と呼び止められる。カウアイに居た時からその青年はサチを‘おばさん’と呼ぶが、彼女はそんなことは意に介さない。不機嫌になったり、「お姉さんと呼びなさいよ」などと言ったりしないのだ。

女のコが気を利かせて席を外すと、サチはその背中を目で追いながら「彼女? なかなかやらせてもらえないでしょ」と青年に言う。青年の「相変わらずきついっすね。でもそうなんすよ。なんかいいアドバイスないっすか?」との問いかけに、サチはこう言う。

「女のコと上手くやるには3つしかない。一つは彼女の話を黙って聞いてやること、もう一つは着ている服を褒めること、最後はできるだけおいしいものを食べさせること」

なるほどである。まず一つ目の「女のコの話を黙って聞くこと」。この短いセンテンスの中で極めて重要なのは「黙って」という単語に違いない。これがモテない男はできない。直ぐに、それはこうだね、こうすべきだよ、とソリューションを提示してしまいがちだ。そんなことを彼女たちは求めていないのである。

かと言って、黙秘権を貫く被疑者のように押し黙っていては駄目だ。気のないテキトーな相槌も駄目。適宜適切に質問をしたり、ときに大きく同意したりしなければならない。黙って聞くとはそういうことである。

次の「着ている服を褒める」もできない。そもそも女のコの服になど興味はないのだから、毎回褒めるのもわざとらしいし、構わずやれば酷くぎこちない褒め方になりそうだ。まれに自分の感性に合った服を「好いね、それ」と言うことはできても、そうしょっちゅうは褒められない。

三つ目の「美味しいものを…」については、何をか言わんやである。何を食べてもそれなりに旨いと思う輩には期待できるわけがない。あの店はあれが美味しかった、これが旨かったなどといちいち憶えていないのだ。──何のことはない、要するに全部私のことである。

「だから、あんた女のコにモテないのよ」

とサチにビシッと言われそうだが、でもいいや、彼女の言葉には愛があるからって、吉田羊が好きなだけだろ!)。

画像引用元 映画.com

 

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