映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(主演 キルスティン・ダンスト)
【これは明日のアメリカか?】
先月末にアメリカのミネソタ州ミネアポリスで、無防備な市民が移民・税関捜査局(ICE)などの職員によって射殺された。そのことを受け、事件現場をはじめニューヨーク、ポートランド、ロサンゼルス、シカゴ、フェニックス、アンカレッジなど全米各地で大規模な抗議デモが行われたようである。
また、そうしたアメリカの現状について、開催中のミラノ・コルティナ冬季五輪に参加した同国代表選手が、
「私が国旗をまとっているからといって、アメリカで起きていることすべてを代表しているわけではありません。私があまり支持できないことが、アメリカでたくさん起きています」
とコメントしたところ、トランプ大統領は「真の負け犬」と罵倒したとも伝えられている。
これまでにも同大統領は再三、主要都市で激化するデモの鎮圧などに、州知事の要請がないまま州兵の派遣を実施しており、市民の反発はかつてないほど高まっているようだ。一部報道によると同国は「内戦前夜」さながらだという。
本作は2024年公開の作品だが、かの国の現状を見るとあまりに予見的であったように思える。非現実的なSF仕立ての娯楽映画だと思っていたので、これまで食指が動かなかったのだが、いざ観てみるとこれは大変見応えのあるシリアスな映画だった。
内容は、憲法で禁じられている3期目に突入した大統領がFBIを解散させるなどの暴挙に及んだことで内戦状態になったアメリカの惨状を描くものである。
現実世界のアメリカでは、全体としては40%程度の支持に低迷しているトランプ大統領も、未だに共和党支持者の間では絶大な人気を誇ると聞く。だが、この映画ではなぜか共和党の支持基盤テキサスと民主党基盤のカルフォルニアが西部勢力と名乗り、手を組む。「憲法を破壊した独裁者を倒す」という一点で、両者がイデオロギーを超えて団結する設定のようだ。
主人公で戦場カメラマンのリーとその一行は、敗戦寸前の政府軍に匿われる大統領にインタビューを試みようと首都ワシントンDCを目指す。
その途中で、彼女らは内戦に乗じて非戦闘員の一般市民を殺している兵士たちに捕らえられる。そのうちの一人がリーらに銃口を向けて問う。
「お前たちはどういう種類のアメリカ人だ?」
彼は生殺与奪の行使が自分に与えられていると勘違いして、無差別殺人を楽しんでいるようにも見える。だが、その問いかけこそが内戦の悲劇そのものではないだろうか。出身地によって種類分けをすることで、非武装の自国民を殺す理由が与えられる。その不条理さがこの問いに凝縮されている。
トランプ大統領の「真の敗け犬」発言は、この兵士の言う「どういう種類のアメリカ人だ?」と同根だろう。また、ICEの職員が無防備の市民を射殺した事実は非戦闘員を無差別に殺す姿と重なる。
内戦前夜は夜のまま朝にならないことを願う。アメリカが壊れれば世界も壊れる。
画像引用元 CAGE

