映画『アフター・ザ・ハント』(主演 ジュリア・ロバーツ)
【第三者には分からない】
これも一言で言えば性加害モノなのだろうが、真実はなにか、正義はどこにあるのかという意味では、世の中で起きている色々なことに引き伸ばして考えられる普遍的なテーマである。
ジュリア・ロバーツが扮するイェール大学哲学科准教授アルマは、お気に入りの教え子マギーからある日、アルマの友人で同僚でもある准教授ハンクに暴行されたと告白される。
一方ハンクは、マギーが論文盗用の疑いがあるので、第三者の居ないところでそれを問い質そうとしたのだと言う。おりしもアルマとハンクは終身在職権(テニュアと言うそうな)を得られるか否かの大事な時期で、マギーとハンクの狭間に立たされたアルマは微妙な対応をしてしまう──。
アルマに限らず誰でも、対応には苦慮するだろう。いや、実際に性加害を受けたことのある被害者も居るから、その方々に配慮して、ここでも慎重に言葉を選ばなければならないのだが結局、密室内で起こったことは第三者には分からないのだ。
よく芸能人や大企業が関わる事案の場合、第三者委員会が設置されて、事の真相を報告書にまとめるみたいなことがされるけれど、あれで一体どれほどの真実が明らかになるのだろうか、といつも思う。事を鎮静化させるための形式的なセレモニーに思える。
性加害について言えば、物証などによって性行為の有無は明らかになることもあるだろうが、そこに同意があったか否かなんて結局第三者には最後まで分からないのではないか。そもそも本人同士だってそのときの意志や感情の機微なんて曖昧なのではないだろうか。後から無意識のうちに微妙に書き換えている部分だってあるだろう。
だが多くの場合、被害者として告発した側の言い分が、(法的にはともかく)社会的には認められる。つまり、告発された側は事の真偽は不確かなまま社会的に抹殺される。本作にあってもハンクは大学を追われた。もちろん、告発する側にとってもある種のリスクはあるけれど……。
アルマが微妙な対応をしたのは、大事な時期に関わりたくないというだけではなかった。彼女自身、10代の頃に性加害を受けたと訴えたことがあったからだ。だが、それは彼女も認識しているように必ずしも性加害と言えるものではなかったのだ。告発された男性はその後自殺したのだと言う。
第三者には知れないアルマの苦悩である。意味深なタイトル『アフター・ザ・ハント』とあいまって……。
画像引用元 よみタイム

