映画「犬も食わねどチャーリーは笑う」(主演 香取慎吾 岸井ゆきの)

【旦那デスノート】
誰だったか忘れたが著名な建築家が、「設計事務所に勤める者は、1日に3回は辞めてやると思うのがまともな神経だ」と何かに書いていた。たしかに私も前職では、顧客や上司の理不尽な要求や指示に悩まされ、毎日ストレスが溜まったものである。
同じようなことが夫婦でも言えると思う。さすがに1日に3回はないだろうが、少なくとも年に3回くらいは「離婚してやる」と思うのがフツーではなかろうか。
いくら愛し合って結婚したところで、年月を経れば相手の粗が見えてきて当然だ。どうにも受け付けられない性癖もあるだろうし、あるいは無神経な一言一言に無性に腹が立つことだってあるに違いない。
そのたびに「バカヤロー!」と心の中で叫んだり、ときには「死ねよ…」とさえ思うかもしれない。だがそこまでなら、くだんの建築家が言う“まともな神経”だと思う。
この映画の主人公夫婦の妻・田村日和は、そんな誰にでもある夫への不満を心で思うだけでなく、ネット上の「旦那デスノート」というSNSに書き込んでしまう。思うだけなら良い。まともな神経だ。だが、書き込んではいけなかった。それが一連の騒動へと発展していく。
たしかにネット上で「いいね!」を貰えば共感された気分になり、発散した気にもなるだろう。だが、書くという行為はアウトプットであると同時に、再インプットでもある。思うだけなら脳の中はどんどん更新されるが、何かに書き込むと発散したつもりが、それはむしろ脳内で固定化されてしまうのだ。
だから、どんなに夫(または妻)に不満があっても、そしてその愚痴を誰かに聞いて欲しくても、SNSなどに書き込んではいけない。途端にまともではいられなくなる。
ちなみに、私はなんだかんだ言っても前職の設計事務所に38年間も勤めた。随分と嫌な思いもしたが、それと同じくらい、いやそれ以上に楽しいことや嬉しいことがあったからだ。夫婦も同じだと思う。7年間しか結婚生活を経験できなかった私にはよく分からないけれど…(しかも後ろの3年間は妻は病床にあった)。
ところで、「旦那デスノート」などというSNSは映画の中だけの話で、まさか実在はしないだろうと思っていたが、ひょっとしたらと試しに検索してみたら真っ先にヒットするではないか! 世の中の奥様方は相当溜まっているんですね。やれやれ……(なぜか「嫁デスノート」の類は存在しないようだ)。
画像引用元 ORICON NEWS