News 2024.05.04
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映画「消えない罪」(主演 サンドラ・ブロック)

映画「消えない罪」(主演 サンドラ・ブロック)

【5歳以下の記憶ありますか?】

成長後の人間は、5歳以下の記憶がほとんどないと言う。わずかに残っている記憶があれば、それは後の人生に大きな影響を及ぼす──というのを何かで読んだ。たしかに自らを振り返ってみても、5歳以下だと確実に思える記憶はほぼない。

残っているのは──、今の浜松開誠館高校(当時は誠心高校)の北側の斜路を三輪車で下っているときのことだ。ブレーキのない三輪車は勢いがつきすぎて途中で転倒したが、そのまま滑り降り、やっと止まったときには左手の小指の爪が完全に剥がれていた──という怖くて痛い記憶だ。

それから、こんな記憶もある。幼稚園の砂場で年長組の子と喧嘩になって、近くにあった大きな石を投げつけたら、その子の額が割れて流血の大惨事になった──。やんちゃなクソガキだったのではない。体の大きな年上の子にビビったあげくの所業である。

だから、この主人公ルース(サンドラ・ブロック)の妹がしたことはよくわかる。怖かったのだ。ただただ怖かったのだ。だが、招いた結果は私のそれと比ではない。だから、その場で即、封印したのだろう。彼女の中では、なかったことにしたのだ。だが時々それは漏れ出てくる。いや、彼女の場合はその記憶が漏れ出ようとするのだろう。

ラストは感極まる。こう書いてしまうと、製作者の意図するやっすい感動物語を想像するかもしれないが、そこへの持って行き方は決してイヤらしくない。むしろ前段で書いた「人間の5歳以下の記憶」のことを思うと自然でリアリティがある。

ラスト直前の緊迫の場面では、少し物足りない印象を持つ人がいるかもしれない。あるいは違う展開を予想した人もいるかもしれない。しかし、私はあの方がラストへの流れが効果的だったと思う。

映画「スピード」でイケイケ姐ちゃん風だった若かりし頃のサンドラ・ブロック。彼女が本作で能面のような表情に終始していたのは、単に彼女が歳をとったからではなく、相応のワケがあったのである。

ところで、私の左手の小指の爪は未だに疼くことがある。そのたびに思うのは、あのとき一緒に誰か居て、後ろから押されたような……。私の臆病で疑い深い性格はあの時に形成されたのかもしれない。

画像引用元 Just Watch

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