映画「ブレイクアウト」（主演 ニコラス・ケイジ、ニコ ール・キッドマン）

【豪邸に住んでも家族は幸せになれない】
思うに、家族というのはコミュニティの最小単位のはずだが、その絆はなんと細く頼りないものだろうか。この家族もバラバラである。親子三人、自分以外をまるで信用していない。とりわけ夫婦間の信用の無さがひどい。

暮らし向きは極めて良い（ように見える）。プール付きの大邸宅に住んでいる。愛車はポルシェだ。何不自由のない生活のはずの彼らだが、決して幸せではない。ジリ貧の宝石商である夫は妻の浮気を疑い、離婚に備えて大量の現金を物置に隠す。妻は夫のよそよそしい態度や心の通わない娘にやる瀬ない毎日を送る。娘は娘で両親の不仲に気付きながらも、悪い友達との遊びにうつつを抜かす。

そんな彼らだが、強盗に押し入られるという非常事態の中で、少しずつ家族の絆を取り戻していく。夫は妻に手を掛けようとする暴漢に、必死で体を張る。娘も家族に降りかかったこの災厄を何とか振りほどこうと機転を利かす。そうした彼らの行動は人間が持っている本能のように見えた。

そして、ラストはハッピーエンドと言って良いだろう。家は焼失しても、彼らの絆はたしかなものになったのだから。

個人主義の世の中で、彼らを笑えない家族も多いはずだ。非常時にならないと、その絆を確認できないのは残念だが、まあそれで良いのかもしれない。

画像引用元　映画チラシサイト