映画「フォークス・オーバー・ナイブズ ─いのちを救う食卓革命」(監督 リー・フルカーソン)
【我々はいつも「最新の研究では…」に踊らされる】
配給会社の説明書きには「食に対する常識を覆す現代人必見のドキュメンタリー映画!」とある。たしかに、動物性食品こそが不健康の根源だとする映画の内容はいささかショッキングである。
もちろん我々は、動物性より植物性栄養素の方が身体に良いことは何となく知っている。私も幼少の頃から「肉より魚、魚より野菜」と言われて育ってきた。
だがこの映画を観て、肉や加工食品が害悪なのはもちろん、牛乳さえもが例外ではないと知り、戸惑いを覚えた。牛乳は長らく「完全食品」として広く世界で賞賛され、その摂取が推奨されてきたからだ。
特に私の世代は、学校の給食が脱脂粉乳から牛乳に切り替わった世代である。あの不味い脱脂粉乳に比べたら牛乳はある種の憧憬をもって迎えられたように記憶している。
それが今や、牛乳までもが害悪なのだという。そう言われると、たしかに牛乳を飲むとお腹が緩くなりがちなのは、身体が拒否反応を示している証拠ような気がしてくる。
この映画では取り上げられていなかったが、似たような食品にマーガリンがある。マーガリンも植物性食品だとして、動物性のバターより健康的だと言われてきた。
ところが最近は、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸が身体に悪いことが判明し、既にアメリカなどでは食品への添加を禁止しているとか。いわゆる悪玉コレステロールを増やして、動脈硬化を促進させ、狭心症や心筋梗塞などの心臓病リスクを高めるのだそうだ。ちなみに、日本ではその摂取量は人体に影響するほど高くないとして、未だ特に規制をしていない。
昔は身体に良いとされたものが、今は駄目だとされる。これは何も食品に限らないだろう。
たとえば私が若い頃は、運動をする前には十分にストレッチをして身体の筋を伸ばしておくことが良いとされた。しかし、今は伸ばし過ぎると逆に本番の記録は伸びないと言われている。
こうしてみてみると、人間はいつの時代も「最新の研究では……」という言葉に踊らされているような気がする。今身体に良いとされているものも、将来は悪いと言われるに違いない。逆に今悪いとされるものが、実は良かったということだって……。
画像引用元 映画.com