新書『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』(斎藤ジン)
【日本の時代の到来?】
著者は、新自由主義が終焉を迎えている現在、日本には千載一遇のチャンスが到来していると言います。
私も実は何となくですが、これからは日本の時代ではないかと感じています。私の場合は何のことはない、最近のスポーツ界の日本人選手の活躍などを見ていてそう思うに過ぎないのですが、特に大谷翔平選手の圧倒的な実力とそれに奢らない振舞いは世界の手本(アスリートだけでなく人としての手本、いや企業や組織などにも応用可能なあるべき姿)になりうるのではないかと思っています。
また、ドイツの天才哲学者マルクス・ガブリエルが新自由主義に代わる概念として提唱する「倫理資本主義」は「三方良し」を旨とする日本人と親和性が高いと感じていますし、米カルフォルニア大学サンディエゴ校のウリケ・シェーデ教授が指摘する「日本はスピードと安定、おカネと意義、利益と目的の間で独自の落としどころを見出している」に意を強くしています。
ですが、これらは情緒的に共感するものの、世界との関係の中で、もう少し現実的かつ具体的な根拠がないものかと常々思っていたところでした。著者が本書で揚げるその根拠は①「大きな政府」の復活 ②覇権国アメリカの中国外し ③周回遅れの日本の優位性 といったところでしょうか。
①については、行き過ぎた新自由主義の反省として今後は政府の役割が大きくなるが、日本のゴールデン・トライアングル(政官財の良い意味での癒着)が強みを発揮すると言うのです。
②については、今後も揺るぎない覇権国としてのアメリカは、新自由主義でいいとこどりをしてきた中国を外してサプライチェーンの再構築を図る必要があるが、その中で弱体化する中国が「窮鼠猫を嚙む」的に台湾侵攻を選択する可能性があるため、地政学的に近隣で最大の同盟国たる日本を優遇せざるを得ないということのようです。
③については、日本は他の先進国とは異なり、「失われた30年」という長い年月を重ねる中で雇用を守ってきたが、新時代に適応する気のないゾンビ社員(会社の不良資産)がやっと居なくなったので、今後は劇的に生産性が向上するはずだ、つまり伸びしろが大きいと主張します。
こうした根拠を基に著者は、日本は再び「勝てる席」に座らされているのだから、その潮目に乗らない手はないと言うのです。
ちなみに、経済学者の成田悠輔氏は最近の日本人アスリートの世界的な活躍は、少子化によってかつての根性論で振るい落とす(ゾンビ?)指導者が嫌われ、子供の自由意思が尊重される中で科学的合理性や効率性に基づく指導がなされるようになった結果だと分析しています。
いずれにしても、潮目に乗れるかどうかはゾンビのくびきから解き放たれた若い世代にかかっていることは間違いありません。

