News 2026.03.14
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新書『ウェストファリア体制』(倉山満)

新書『ウェストファリア体制』(倉山満)

【読みやすいけど品がない】

浅学な私は「ウェストファリア体制」なる言葉を最近になって知った。そこで、教養の足しにしようとこの本を手に取ったのだが、さて困った。ここに書かれていることを、どこまで信用して良いものやら……。

というのは、著者の書き方が断定的で品がなく、あまりに独断と偏見に満ちている(ように思える)からである。

例えば、宗教改革の祖マルチン・ルターは元祖ネトウヨだと断じ、国際連盟の提唱者ウッドロー・ウイルソンは狂人だと断定し、太平洋戦争で日本は物量で負けたわけではないと断言する──このほかにもあげ出したらきりがない。

私の浅薄な知識ではそれらの真偽はもちろん、著者の独断と偏見によるものなのかも分からない。だが、そう思えてしまう書きっぷりである。

いったいどんな人が書いているのだろうと、あらためて表紙の帯に載っている著者の写真を見ると、深い陰影のなかで不気味に笑う男が写っている。まるでホラー映画さながらに。これは本書の内容に合わせて、狙った写真なのか? だとしたら、PHP新書もなかなか手が込んでいる──。

と思いきや、本文は誤字脱字の類や表記の揺れのオン・パレードで、それはもう著者や編集者のみならず、出版社の資質を疑うレベルである。

そうした著者の顔写真や校正の不備はさておくとしても、もう少し品よく書かないと言いたいことも読者には届かないな、と思った次第である。

だが困ったことに、著者の品のない論調は一方で読み易さでもある。往々にして良識ある専門家のそれは正確性を期すがために、回りくどく多義的で難解になりがちである。だが、本書はその対極にあってスラスラ読める。

その結果私がこの本で、著者の独断と偏見を差し引きながら理解したのは、どうやらウェストファリア体制というのは、17世紀前半のヨーロッパで起きた30年戦争の講和条約に基づく主権国家の並立体制を言うのだということ。そしてそれは、戦争はしないに越したことはないが、やむを得ず戦争をするにしても最低限のルールが必要だというのを説いたものであること。さらに現代は、この考え方が事実上崩壊して、元のルールなき殺し合いの世界に戻っていること。

──それくらいだ。果たして教養の足しになっただろうか。

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