新書「土 地球最後のナゾ」(藤井一至)

【大学の専門課程に異議あり!】
私は大学で土木工学を学んだ(ことになっている)。よく言われるように土木の肝は「土と水を制すること」である。
土木工事の多くは構造物を設置するために土を掘削したり、盛ったりするから基本的に土との格闘だ。そして、その際に発生する地下水をコントロールする必要があるし、工事の時期と場所によっては、雨水対策も施さなければならない。
そうした土と水を制するにはそれらの基本原理を理解していなければ話にならない。それは即ち──学科の講座名で言えば──土質工学と水理学ということになる。私はこの二つがまったく駄目だった。
土質工学は専門課程1年目の履修で5段階評価の2(いわゆる「可」)を貰い、何とか単位を取れたが、水理学にいたっては1年目が1で「不可」、2年目でやっと「可」を貰えた程度の体たらくである。土と水の基本原理を理解したとは言い難い。
当時、部活動ばかりに熱中していた私にとって、授業を毎回サボらず出席することは難しかった。自ずと試験前に教科書を頼りに独学することになる。
しかし、土質工学は教科書の最初の方で躓いた。そこには「土は砂とシルトと粘土で構成されている」と記してあった(ように記憶している)。土は分かる。砂も分かる(幼いころ、砂場で良く遊んだからだ)。粘土もわかる(粘土細工は得意だった)。だが、シルトってなんだ? 土の中にそんなものあったっけ??? そのシルトなるもののイメージがつかめず以来、土質工学はチンプンカンプンになった。私は分からないことがあると先に進めないタイプなのだ。
あれから四十数年の時を経て、本書を読んでみたら、あの頃分からなかったことがだいぶ理解できた。いつも思うのは、大学の専門課程がいきなり専門的過ぎるのである。数年前にはフツーの高校生だった者に土や水の特性(それらの力学的特性等)を理解しろというのは無理がある。
それが出来ていない者に、偏微分方程式を解かせることに何の意味があるのだろうか? 本書のような「土のそもそも論」や「水のそもそも論」の講義を、専門課程の前に履修させるべきだ!(と、かつての落ちこぼれ学生は思う。)