News 2024.04.27
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小説「ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人」(中山七里)

小説「ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人」(中山七里)

【「死ぬ権利」の議論を堂々としよう】

映画が酷かった──「死ぬ権利」をどうするかがテーマのはずなのに「快楽殺人事件」に変容させた──ので、原作小説はそこをどう扱っているのだろう、と思って読んでみました。さすがに原作は相応に突っ込んで描かれていたと思います。

過日ここで書いた映画の感想では、主人公の犬養刑事があくまで法の遵守か、それとも人道的な対応かの究極の選択──つまり、傷病の苦しみから逃れ(させ)るために死を選ぶ(または与える)べきか否か──を、我が身をもって迫られるべきと指摘しました。私の想定したシチュエーションとは異なりましたが、原作はやはりそうなっていました(そうだよね、当然)。

そこは良かったのだけど、物語はその後あわただしく収束に向かってしまい、私にはそれが少々不満でした。あれで終わってしまったら、この国で「死ぬ権利」の議論は深まらないように思ったのです。あそこまで書いたのなら、さらに法廷で関係者を証人として呼び、彼らの心情の一部始終を詳らかにする──そこまで描いてこそ、初めて社会に問うことが出来るのではないでしょうか。

私などは、終末期をただ延命させるのは一種の拷問だと思っているのですが、意外と今でも「どんな状態であろうと親には一日でも長く生きて欲しい」と言う人が結構いることに驚かされます。そして、そういう人たちを歓迎する医師が多いことにも……。

もちろん、「死生観」は人それぞれなので、他人のそれを批判する気はないのですが、せめて自分の「生きる/死ぬ」は自分で決めさせて欲しいと思います。少なくとも、その意を汲んでくれたお医者様の人道的な行為が殺人罪に問われるなどということが無いようにしなければならないと思うのです。

皆さんはどう考えますか?

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