テレビドラマ『Dr.HOUSE/ドクター・ハウス』(主演 ヒュー・ローリー)
【偏屈で嫌な奴だけど】
主人公グレゴリー・ハウスは、米プリンストンのとある病院診断科のトップを務める世界的名医である。フツーの医者ならサジを投げるような複雑な病状を適確に診断し、適確な治療をして患者の命を救う。だが、それだけに感情にほだされたりしないし、患者に寄り添ったりもしない。たぶんグーグルマップの評価は星一つに違いない。
ハウスの診断は独特である。部下の医者3~4人に討論させながら病名を明らかにしていくのだが、議論を司る彼はほとんど彼らをおちょくるか、馬鹿扱いをするだけである。
もちろん、彼も神様じゃないから最初から適確に診断できるわけではない。部下から上げられる可能性のある病名やそれを根拠づける検査結果等を見極めながら、行きつ戻りつしながら答えに近づいていく。だから本来なら、おちょくったり、馬鹿にしたりする必要などないはずだ。でも、彼はそうしないではいられない。
要するに、偏屈で嫌な奴なのだ。患者ばかりか、病院内でもハウスを嫌う者は多い。部下の筆頭フォアマンも彼の診断能力には敬意を払いつつ、
「彼のようにはなりたくない」
と言って一度は離反する。
分かる。いくら能力はあっても年がら年中、こういう人間と一緒に仕事をするのはきつい。
私のかつての上司もそういう人だった。仕事そのものの能力は抜群だが、とても嫌味な人だった。だから、私もフォアマンと同様、「いくら仕事が出来ても、あんなふうにはなりたくない」と思い、やがてその人のもとを離れた。
だが、私もそれなりに仕事が出来るようになった頃、あるときに気付いたのである。仕事のやり方や人との接し方がその人そっくりになっていることに。若い頃に師事した上司の影響は大きいらしく、いつのまにか私自身も偏屈で嫌な奴になっていたのだ。
ところで、ハウスはあんなに嫌な奴なのに、彼を理解してくれる上司や同僚、さらには何だかんだ言っても彼を慕う部下に恵まれている。なぜか? ハウスは何より患者の命を第一に考えるという医者の本分を全うしているからだ。そして、彼なりのやり方で周りを気遣っている──そのことに彼らは気づいているからだろう。
嫌味で偏屈なのは、ただシャイなだけなのだ(すっかり嫌な奴になってしまった私には分かる)。私も職業人としてはハウスのようにありたいと思っている。
画像引用元 Prime Video

