テレビドラマ『ヴィレヴァン! エピソード6』(主演 岡山天音 滝藤賢一)

【情熱のパラドックス】
たとえば新規開業したカフェは1年で半分がつぶれ、3年で8割が閉店の憂き目に遭う──と言われます。これはカフェ機能も持つ当館としてはよくわかります。
最初の半年くらいは嘘みたいにお客様が来ますが、その後は徐々に客足が遠のいていきます。私の肌感覚では(ちゃんと統計を取ったわけではありませんが)、再び来てくださるのは新規のお客様の2割くらいだと思います。
最初は皆どんな店だろうという興味本位で来てくれますが、そういう方のほとんどは1回来れば満足するので、またよそに新しい店がオープンすればそちらに流れて行くのだと思います。私自身も客の立場のときはそうだから、これは仕方ありません。
そして、常連として定着してくださるお客様は、リピーターとなった方のさらに2割程度だと感じています。気に入ってくださって、暫く足しげく通ってくださる方もそのうちにパタリと来なくなる。こうした方は多分、マイブームを追い求めているお客様なのでブームの最中は来てくれますが、それが去れば次のブームを見つけてほかに行ってしまう。これも仕方ありません。
そんなわけで、新規のお客様のうち、常連となってくださるのは、0.2×0.2=0.04ということで4%程度ではないかと思っています。私のこの「2割×2割」理論の数字自体は業種業態によって異なるでしょう。しかし、以前何かで読んだ「読書を日常的な習慣としているのは実は5%程度しかいない」という言説とほぼ一致するので、私設図書館としては「2割×2割」理論は信ぴょう性があるではないかと密かに思っています。
とはいえ、そんな理論だけでは何の役にも立ちません。お店の永続性を考えれば、その割合自体を増やすか、母数である新規顧客を増やすかが必須となります。しかし、そこではこのドラマのような葛藤が避けられません。
自分の好きなこと、やりたいこと──それらとお客様の平均的なニーズは異なります。やりたいことを貫けば売上は上がらない。売上が上がらなければ店を続けられない。一方、お客様の平均的ニーズに媚びた店にすれば、彼らのモチベーションは上がりません。
よって、店の売上と自分たちのモチベーションのバランスをどう保つか──。その辺りがこの手のニッチな店を続ける最大の悩みどころでしょう。それは当館の悩みでもあります。私設図書館のヴィレヴァン化──書籍以外のものも貸し出してサブカルの殿堂にする──は一つのアイデアだと思っていましたが、これを視るといずれ同じ葛藤に悩まされるのは明らかなようです。
過日の報道によるとかつて全国に約400店あったヴィレヴァンも、近く81店舗を閉めて200店程度にするのだとか……。
画像引用元 ヴィレッジヴァンガード