テレビドラマ「ギバーテイカー」（主演 中谷美紀）

【私も中谷美紀に褒められたい】

久しぶりに中谷美紀の主演作を観た。私にとって中谷美紀といえば、やはりテレビドラマ「ケイゾク」である。あれで彼女は、それまでのお嬢さん役、お姫様役の女優から一皮むけたように思う。

その後、印象に残っているのは映画「嫌われ松子の一生」だが、あれは少々やり過ぎである（彼女の女優魂には頭が下がるが…）。あとほかは映画「阪急電車」くらいだろうか──。のちに彼女は国際結婚して、それを機に活動量を減らしたのか、私の興味が薄れたのか定かではないが（おそらくその両方だろう）、とんと見かけなくなった。

そんなわけで、しばらくぶりに彼女を観てそれなりに楽しませてもらった。「それなりに」というのには、理由がある。ひとつは脚本に対する不満で、いま一つはキャスティングに対する疑問である。

まず脚本について。元の原作がそうなのかもしれないが、犯人・貴志ルオトから主人公で刑事の倉澤（中谷美紀）のスマホに犯行を認める内容の電話があったというのに、通話を録音しないなどということがあるだろうか？　それまで警察内で倉澤の妄想とされていたルオト犯人説を証明できる千載一遇のチャンスだったはずだ。

しかしまあ、それは百歩譲って、愛娘を少年時代のルオトに殺された倉澤だから感情的になって動転し、録音出来なかったとみることはできるかもしれない。たしかにこの倉澤は冷静な刑事とは言い難いから、その演出とみることもできる。

だが、その後またも直接電話があったのに、さすがに二度同じ過ちを犯すのはプロの刑事としてリアリティを欠く、ひいては脚本として甘いと指摘されても仕方あるまい。

続いて、成長した貴志ルオト役のキャスティングについて。キャスティングというよりは、この役を務めた菊池風磨の役作りというべきかもしれない。ネット情報によると、中谷美紀は彼の演技を絶賛したというが、私にはそうは思えないのだ。

というのは、少年時代の貴志ルオトが恐ろしいのは、感情が見えないからである。一見、フツーの素直な良い子に見える。そんな子が何のためらいもなく人を殺したというギャップに、何を考えているか分からない空恐ろしさを感じる。

ところが、菊池が演じる成人した貴志ルオトは打算的にほくそ笑んだり、憎悪をむき出しにしたりで、これではよくいる殺人犯の一人に過ぎず、このドラマの前半で描かれた少年・貴志ルオト像が台無しである。

中谷美紀は、むしろ子役の方を褒めるべきだったと思う。そう思うのは、私の嫉妬だろうか。

画像引用元　WOWOW