News 2024.09.06
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テレビドラマ「アンチヒーロー」(主演 長谷川博己)

テレビドラマ「アンチヒーロー」(主演 長谷川博己)

【アンチヒーローって誰なのさ】

初回を観た時には、ああ、よくある法廷ものかぁ、と思った。冤罪を科学的根拠に基づき晴らすというのは、福山雅治のガリレオシリーズや坂口健太郎の「イノセンス 冤罪弁護士」などで手垢がついていて、今更感を禁じえなかったのである。

しかし、2回以降は科学的知見にウエイトを置くのは影を潜め、回を進めるごとにこれはそれらの法廷ものとは一線を画していることが分かってくる。毎回のエピソードは完結しながら、最終回に向かって大きな流れを作っていく──というのがこの手のドラマの醍醐味であるが、そうした中でもこれは群を抜いて見応えがあった。

このドラマの大きな流れとは、一言で言えば検事正の不正を暴くという巨悪退治である。そのためには、別の殺人事件の犯人をあえて無罪に導くことも厭わない──、そういう主人公の明墨弁護士のやり方は正義感あふれる若手弁護士・赤峰ならずとも不審に思えるところだ。だが、その後の展開で、すべてが終わったらその殺人犯には自首させることまでを含めた戦術であることが知れる。

そうしたことなどから観ている者は、最初から明墨の描いたとおりのストーリーで事は進んでいるのだと安心する。しかし、明墨がそこまでして手に入れた動かぬ証拠をも検事正・伊達原は隠滅する。完璧なストーリーは一旦破綻すると、立て直すことは困難だ。果たして明墨は──というドラマである。

もちろん、巨悪退治という大きな流れを作った脚本も良いし、主役・明墨を務めた長谷川博己も好かった。だが、このドラマの最大の立役者は悪徳検事正を演じた野村萬斎だろう。ここまで分かり易い悪役は最近では珍しい。多くの場合、悪役にも悪役なりの正義があったり、同情を禁じえぬ背景があったりする。そうした中で、彼が演じた伊達原検事正はとにかく憎ったらしい。早くコイツをやっつけて欲しいと観る者に思わせる。

ラストでは、赤峰が明墨のことを「先生のようなアンチヒーローが必要……」と言ったが、明墨はやっぱりヒーローで、アンチヒーローって伊達原検事正のことだよね?

画像引用元 岩手日報

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