書籍「そして生活はつづく」(星野源 著)
【面白い星野源】
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星野源は、好きなアーティストです。歌も好き。俳優としても好き。トークも好き。私の好きな人から教えてもらったアーティスト。
じゃじゃの私設図書館で、返脚本を棚に戻す作業の時、目に止まったのは、こんな星野源さんへの、好き、があったから。
文章も最初から心わしづかみでした。
そして星野源さんの言葉運びが最高。「ただ連載を続けていても、生活が置いてきぼりだったら意味がない」……。生活が置いてきぼり!とは! 置いてきぼりの反対語は、さあご一緒にだろうかと、ふと考えてスマホ辞書を検索。「生活と、さあご一緒に。」へんてこりんになってしまった。
ページをめくる度に、笑える表現に出会う。例えば……、「夜、掃除機を取り出し、コンセントをつなげて呟いたことがあろうか?『今日は眠らせないぞ』と」。おもしろすぎ、星野源さん。
お箸を買い替えるだけなのに、やしきたかじん的なドラマがはじまり、引き込まれてしまうような思考回路的な文章。
「ノーワーク ノーマネー ノーライフ」とか、「不器用だから二足のわらじをはいちゃダメかもしれないけれど、二足のわらじをはく人のほうがおもしろい」とか、出てくる言葉運びが気持ちいい。
洗面所がびしゃびしゃになることを相談したら「気にしないのが一番だよ」と答える細野晴臣さんにもスケールの大きさを感じる。そして、「私は水に限らずいろいろなものをビシャらせてしまう才能がある」という星野源さんの才能もしかり。おもしろすぎる。そしてついに「洗面台ビシャ男」と名前の改名にまで話が広がる、素晴らしいストーリー運び。
絵が異常に下手で、動物を描くと、決まって下半身が液状になってしまうという下りは、天才的というしかない。
「吾輩はバカである。名前は、あるけど忘れた」を境にして、突然、夏目漱石さんのポッちゃん風語りで軽快に進む言葉、リズム感抜群。そして、日本地図を描いても西日本が液状になってしまうと、笑いが幾層にも詰め込まれていて、もうやられっぱなし。
落語家の桂枝雀さんの、言葉の引用──同じようなことを楽しいと思い合う、そんな風なことが落語をやっていく上で大事で、気持ちがいけいけになり、あなたも私もいないようになり、それが笑い合うっていうこと。そして星野源さんは「自分とか他人とかどうでもよくなる瞬間、仕事や日常をよりよく過ごすためのヒント」とつないでいる。途中、ちょっと真面目な話の展開で、気持ちが真面目よりにシフトしてあらら!と思ったが、最後まで読むと、面白さが続く。続編がないか探したくなるくらい。