小説 「グロテスク」( 桐野夏生作)
2022
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小説 「グロテスク」( 桐野夏生作)
【グロテスクの力】
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グロテスクという言葉から、私は醜い物、おぞましいもの、できれば避けたい事象と感じたものの、手に取り読み始めたのは、年末年始の比較的長くまとまった休暇に入ったのもひとつの理由。
たくさんの登場人物が出てくる。主人公「わたし」が、回顧録のように語りながら物語は進む。「わたし」が周囲をとらえる時の考え方は暗くひねくれているにもかかわらず、私はある意味ほっとする。自分の内側に隠れている暗くひねくれた考え方に対して「あるよ、誰でもあるよ、そういう気持ち」と代弁してくれているように感じるからだと思う。
また、この物語からは「違い」がうみだす力を感じる。醜美、男女、貧富、階級、生まれた年代、生まれた国…等、様々な違いは人々の意識を動かしていく力となるのだと。その力はグロテスクという言葉のもつ力なのかと。
上下巻にわたる長い小説だけど、2回通りも繰り返し読んだ私。この物語の力によるものだったのかもしれない。