News 2025.07.14
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書籍「私説・日本合戦譚」(松本清張)

書籍「私説・日本合戦譚」(松本清張)

【フェアじゃない】

この本では著者・松本清張が我が国を代表する九つの合戦を物語っている。主に戦国時代の合戦だから、当然のごとくクライマックスは「関ヶ原の戦」である。

関ヶ原の戦については今更ここで説明するまでもあるまい。天下分け目の戦いと言われ、これを機に戦国時代に終止符が打たれた。その後260年余りにわたり泰平の世となったのは誰もが知るところである。

だが私は東軍の徳川家康に対峙した西軍の大将が石田三成だと最初に知ったとき(たぶん中高生の頃だ)、「誰だ? それ」と思った。名前くらいは聞いたことがあったと思うが、当時の私にとってはあまりにマイナーな存在である。そんなのが超メジャーな徳川家康と戦っても勝てるわけないじゃん、と思ったのである。

もちろん今なら多少の知識もついたから、石田三成が豊臣秀吉の筆頭秘書官のような存在だったことを知っている。武功に乏しく官僚的だったとされ、それが秀吉に仕えた旧来の武将から忌み嫌われていたということも。

それにしても著者・松本の三成の書き方は手厳しい。三成の将としての器量不足や関ヶ原に至るまでの無為無策をさかんに責めるが、私は少し言い過ぎだと思う。

結果が分かっている中で、後から負けた原因をあれこれとあげつらうのは簡単だからだ。ましてや敗者の人格にまで物申すのはフェアではない。中高生だった私が「勝てるわけないじゃん」と思ったのと、さして変わらないではないか。

あるいは、プロ野球のペナントレース終了後に最下位に沈んだチームについて、あれやこれやと敗因を上げて見せる野球評論家と同じである。後からは何とでも言える。

そんなエラソーなことが言えるのならと、彼ら評論家諸氏にシーズン前に順位予想をさせても滅多に当てることはできないのだ。何故か? 戦う前は不確定要素が多すぎるからだ。それらの不確定要素は戦っていく中で偶然に偶然が重なって確定していく。つまり運だ。まさに「勝負は時の運」なのである。

したがって関ヶ原の戦だって、東軍の圧勝があたかも必然だったかのように言われるが、それは後知恵に過ぎない。ほんのちょっとした偶然で家康の歯車が狂えば三成が勝っていたかもしれないではないか。もし、そうなっていれば「家康なんか三成に勝てるわけないじゃん」と今の中高生に思われるのである。

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