News 2026.08.01
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書籍『成功の実現』(中村天風 述)

書籍『成功の実現』(中村天風 述)

【元祖自己啓発本?】

おそらく一般の書店や公立の図書館でもそうだと思うが、当館でも自己啓発書の類が多くて、書棚の相当量を占めている。私自身はほとんど読まないので、当館の場合私の蔵書ではなく、寄贈本である。人々はそれだけ自己啓発書が好きなのだろう。事実、それらを借りていくご利用者も多いのである。

私自身は読まないと言ったが、何を隠そう、私もむさぼるように読んだ時期があったのだ。それは妻が癌を患い、闘病を共にした時期と重なる。

自己啓発書の魅力は、自分が常々抱えている問題や悩みに対して、ポジティブな気分になれることである。

とはいえ、読んでいる最中は「うんうん、良いこと書いてあるなあ」と思うのだが、いざ読み終えるとはて何が書いてあったのか、ちっとも思い出せないのだ。

この、読んでいるうちはいい気分、しかし読み終えると何も残らない、というのは自己啓発書の共通パターンと言って良いだろう。だからこそ、また新しい自己啓発書を読みたくなる。まるで麻薬のように。そのことに気付いたとき、私はその類の本をすべて古本屋に売ってしまった。当館の寄贈本も、同じことに気付いた人が持ってくるのかもしれない。

さて、そうした自己啓発書の中でも、本書を始めとした中村天風の本だけは手放すことはなかった。もっとも、これらを自己啓発書と言ったら天風先生や天風会の皆さんに叱られるかもしれないが、私にとっては元祖自己啓発書に思える。

当時不治の病とされた結核を抱えた若き日の天風が、インドで大きな滝の堕ちる轟音のもとで静寂を得たというエピソードをもとに、なにものにも捉われない無我無心の境地とその実践を説くものである。

この本にある「病気は病気のことを忘れたときが治ったときである」という言葉は、癌に侵された妻と暮らす中でどれだけ助けになっただろうか。

元祖自己啓発書と言ったが、改めて本書を開かなくても、こうして書いてあることを思い出せるのだから、粗製乱造されている昨今のそれらとはやはり一線を画している。近年はあの大谷翔平も愛読しているのだとか。

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