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書籍「猪木詩集『馬鹿になれ』」(アントニオ猪木)

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【亡くなったアントニオ猪木氏を悼む】

私はずっと貴方が嫌いだった。それは小学生の頃、プロレス好きな友達がジャイアント馬場推しだったからかもしれない。馬場に比べて均整の取れた身体をした貴方は、ストロングスタイルのレスリングを標榜して、リング上では「なんだ、コノヤロー!」と相手を威嚇した。顎が出ているとはいえ精悍な顔つきな貴方は、女優と結婚したりもした。そうした一挙手一投足が目立ちたがり屋に見えて嫌いだった。

だから、ボクシングのモハメッド・アリや空手のウィリー・ウィリアムスなどとの異種格闘技戦では、いつも貴方ではなく対戦相手を応援した。オリンピック金メダリストの柔道家ウィレム・ルスカが貴方に負けて、貴方が、そしてプロレスが大嫌いになった。

貴方が不沈艦スタン・ハンセンにウエスタン・ラリアットを喰らったとき、あるいは欧州の帝王ローラン・ボックに高速スープレックスでマットに沈められたときには胸のすく思いをした。その後に台頭してきたUWFの前田日明との対戦が組まれなかったのは、貴方が逃げているような気がして不満だった。

妻の友達がプロレスラーの奥さんだったので、その伝手で何回か会場に足を運んだことがある。あるとき、関係者しか入れない所で、彼女と一緒に旦那さんである某プロレスラーを出待ちしていると、貴方が通路の奥からやって来て私たちの脇を通り抜けて行った。高価そうな背広に包まれた肉の厚みには圧倒されたが、その日試合がなかったにもかかわらず身体を横に傾けながら足を引き摺るようにして歩くその姿はなんだか小さく見えて痛々しかった。

その後、貴方は政界にも進出して、国会で場違いな「元気ですかあ!」を連発した。そんな貴方を見ると――本書で貴方は「馬鹿になれ」というけれど――自分が他人から馬鹿にされているようで嫌だった。

さらに時を経て、ここ数か月の病床での貴方を見るのはもっと辛かった。そして、一昨日とうとう貴方は逝ってしまった。――やっと分かった。私はずっと貴方が好きだったのだ。

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