News 2024.02.26
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書籍「書楼弔堂 待宵」(京極夏彦)

書籍「書楼弔堂 待宵」(京極夏彦)

【きちんと過去を見詰め直せば……】

映画「PLAN75」に出てきた制度──高齢者に死を選ばせる──については、私のような肯定派(もちろん条件付きだが)は少ないようだ。
 
まず、若い人に否定的な意見が多いのは意外である。彼らを助けるための制度なのだが、彼らはそれと理解したうえでも、国が身近な高齢者(たとえば祖父母)に死を迫る制度だと認識し、それが許せないようだ。
 
対象となる高齢者、あるいはその予備軍たる中高年からも概ね不評である。ネットなどでは肯定派も散見されるが、少なくとも今まで私の身の回りで、あれを良いとする人間はいなかった。
 
しかし、この本で私の仲間を見つけた。おそらく彼なら賛同してくれるのではないだろうか。彼は書舗「弔堂」を訪ねる何人かの明治初期の歴史上の人物を、行きがかり上、件の書舗に都度案内する。彼自身も明治維新で何か大きな経験をしたようだが、今は甘酒屋の主人に身をやつしている。老いさらばえたこの男には、もはや生きる希望はない。惰性で生きているだけだ。私と同じだ。
 
お気に入りの「弔堂」シリーズにしては一つひとつの話は、やや退屈だった。がしかし、読み進めるうちに事の興味は、甘酒屋の厭世観のもとが何であるか、そしてそれは私のそれとも共有できるものなのか、に移っていく。
 
その種明かしがされる最終章は圧巻である。話が凄過ぎて、もちろん私のちっぽけな厭世観と共有などできるわけはない。しかし、私もきちんと後ろ(過去)を見詰め直せば、前(明日)に希望が持てるのだろうか、なあ弔堂よ──。
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